仲間の前なら、隠していた気持ちを吐き出せる。「やっと私の人生が始まる」

── こどもぴあを設立する直接のきっかけは何だったのでしょうか。

 

坂本さん:既存の家族会は「親のための会」がほとんどで、子どもの立場だと共感できずモヤモヤしていました。2015年、研究者として家族会に関わっていた横山恵子教授が子どもの立場の人が集える場を企画してくださって。参加した瞬間「僕が求めていたのはこれだ!」と。そこから3年後に「こどもぴあ」を設立しました。

 

── 「こどもぴあ」を設立し、当事者が集まって話す場を大切にしている理由はなんですか?

 

坂本さん:同じ境遇の人たちが言葉を紡いで当時を語ってくれると「自分もそう感じていたかもしれない」と自分の核心に近づけるんです。僕は話し合うことで、あのとき母の愛情を求めていたんだなとか、悲しかったんだなと認識することができました。


 
実際、参加してくれた40代の女性が「ずっと誰にも言えなかったことを初めて口に出すことできました。ここからやっと私の人生が始まります」と言ってくれたのがとても印象的でした。自分の気持ちに蓋をしてきた人が、安心して吐き出せる場所。こどもぴあは、そういう居場所であり続けたいと思っています。

 

 

私たちは、過酷な環境にいる子どもを見ると、つい親を「加害者」や「毒親」と呼び、断罪してしまいがちです。しかし、その正義感から放たれる言葉は、親を守りたかったはずの子どもの心を、かえって深く傷つけてしまうことがあります。

 

「しんどかった。けれど、母を悪者にはしたくない」。坂本さんが辿り着いたその境地は、外側からは決して測れない「家族の真実」です。安易な言葉で決めつけず、割り切れない思いを抱える親子の間に、私たちはどれほどの想像力を働かせることができるでしょうか。

 

取材・文:小新井知子 写真:坂本拓