もし、あのまま母と住み続けていたら。感情を失い「ロボット」になっていた自分

── お母さんと離れて14年。今、振り返ってどう感じていますか。

 

坂本拓
「母と離れてひとり暮らしをしなければ生きていたかもわからない」と話す坂本さん

 

坂本さん:離れたことで母に対する過剰なアンテナを下ろすことができ、驚くほど頭がスッキリしました。今は年1回程度の連絡ですが、姉がメインで見てくれるなど、家族内でのバランスも健全に保たれています。

 

もしあのとき、ひとり暮らしを選んでいなかったら、僕は今こうして仕事に集中できていなかったでしょう。ケアに忙殺され、感情を失ったロボットのようになり、自分の人生を生きている実感もないまま、大げさにいったら、生きていたかどうかもわかりません。自立は、母を見捨てたのではなく、僕たちが「ひとりの人間」として再生するために必要なステップだったのだと。自立を選択して本当によかったと思っています。 
 

 

「家族なのだから、自分が支えなければならない」。その強い使命感が、時に本人も家族も、出口のない暗闇へ追い込んでしまうことがあります。

 

専門職として、そして息子として、坂本さんがくだした「離れる」という決断。それは決して見捨てたのではなく、互いがひとりの人間として呼吸を取り戻すための、最後の手立てでした。あなたは、家族という「役割」に縛られすぎてはいませんか。

 

取材・文:小新井知子 写真:坂本 拓