ワクチン空白世代の当事者として。公表に込めた想い

── 鹿乃さんの世代は、HPVワクチンの積極的勧奨が一時中止されていた時期ですね。

 

鹿乃さん:そうなんです。当時は副反応への懸念が大きく報じられ、自治体からの通知も控えられていた「空白の世代」でした。私の周りでも接種していない人がほとんどです。

 

正直に言えば、もしあのとき接種していれば、今の状況は違ったかもしれないと考えたこともあります。でも、当時の社会情勢のなかで、大切なわが子を想って接種を控えた親たちの判断を責めるつもりはまったくありません。

 

ただ、がんを経験した当事者としては、リスクとメリットを正しく比較できる情報の重要性を痛感しています。ワクチンの意義はもちろん、たとえワクチンを打っていても防げない型があること、そして何より検診が「最後の砦」になることにも理解が必要です。

 

迷いながらもYouTubeで公表したのは、私のような思いをする人をひとりでも減らしたいという使命感のような気持ちからでした。動画を観た方から「初めて検診に行きました」「パートナーとワクチンの話をしました」というコメントをいただくたび、発信してよかったと心から救われる思いがします。

「戻るべき場所」があるから、今日も全力で走れる

── 30歳で開業されて現在3年目。院長として多忙な日々を送られていますが、今大切にしていることは?

 

鹿乃さん:スタッフ全員とたくさん話すことです。私がいなくても病院を守ってくれた彼女たちが、言いたいことを言える環境をつくりたい。ひとりで仕事をしていたら、病気のあと、ここまで早く前向きにはなれなかったはずです。

 

鹿乃さやか
開業当初の写真。鹿乃さんは前列右から2番目。現在ではスタッフは12人に

── 仕事が充実している様子が伝わってきます。

 

鹿乃さん:診療にYouTube、経営の仕事と、日々休む間もありませんが、今は本当に楽しいです。事故もがんも、私に「時間の尊さ」を教えてくれました。これからも歯科治療のハードルを下げ、ひとりでも多くの人を笑顔にできるよう、全力で発信し続けたいと思っています。

 

 

検診を受けていたにもかかわらず進行していたという鹿乃さんの経験は、多くの女性にとって他人事ではありません。みなさんは、定期検診やワクチンの大切さ、あるいは「セカンドオピニオン」の重要性についてどう考えますか? 自身の経験や、がん検診に対する率直な思いを聞かせてください。                                 

 

取材・文:池守りぜね 写真:鹿乃さやか