助手席で遭遇した、居眠り運転による凄惨な交通事故。原形をとどめないほど大破した車体の中で、歯科医師・鹿乃さやかさんの膵臓(すいぞう)はちぎれた──。7回の手術、3か月の入院。水1杯すら口にできず、ガリガリに痩せ細った体で絶望の天井を眺め続けた日々。「痛みの恐怖」をみずから痛感したことで見出した「私の役目」とは。

アレルギーで苦しむも…ポジティブ思考の原点は

── 幼少期はアトピーや食物アレルギーで苦しまれたそうですね。お母さんが鹿乃さんのアレルギー対応をされていたとか。

 

鹿乃さん:そうですね。特にアトピーは重度で、毎日血だらけでした。食物アレルギーで給食がまったく食べられなかったので、ひとりだけお弁当を持参。でも母は本当に根気よくケアしてくれて。だからつらい記憶はないんです。冷静に考えたら大変な状況だったと思うけれど、家族がつねに前向きで、当時から本当に大事してもらってきたのが、今の私の超ポジティブ思考のベースになっていると思います。

 

鹿乃さやか
アトピーに悩まされていた幼少期のころ

── そんなご家族のもとで育ち、その後は大学の歯学部へ進学。進学先はお父さんの影響だったそうですね。

 

鹿乃さん:はい、父が実家の愛媛で歯医者をやっていたんです。小さいころは親の仕事にそれほど興味はなかったのですが、学校帰りに患者さんによく声をかけられて。「昨日は歯が痛くて眠れなかったけれど、あなたのお父さんが治療してくれたおかげで今は痛くないよ」と感謝されたんです。そのときに「歯医者って人の痛みを取り除ける素敵な仕事なんだな」と初めて感じて。それがきっかけで、歯科医を目指すようになりました。