愛猫が生死をさまよった経験が転機に
── ゴールドマン・サックスに3年勤務した後に転職。資産運用会社で働いていたものの、その後、金融業界を離れて起業を決意したそうですね。順調にキャリアを築いていたかのように思えますが、なぜでしょうか。
細山さん:金融の仕事はとても責任があり、やりがいがありました。いっぽうで、誰のために働いているのかが見えづらくて。もう少しお客さまと直接会って、「ありがとう」と言われる仕事がしたい…と思うようになりました。それで、2022年に資産運用会社を退職しました。
辞めた後どうするかはいっさい決めていませんでした。半年くらいニート生活を送っていたんです。ばく然と起業を考えていたので、東京都が催している起業家向けのセミナーやワークショップなどに参加していました。

── 2024年1月、細山さんは友人である獣医師と一緒に株式会社VetsBrainを立ち上げました。獣医師から飼い主への診療説明を円滑化する、ITサービス開発などを手がけているとのこと。こうした事業を立ち上げようと思ったのはなぜでしょうか?
細山さん:少し話は前後するのですが、 2021年、愛猫が病気になり生死の境をさまよった時期があります。必死の思いで動物病院に行ったのですが、病気の専門的な説明を理解するのが難しくて…。猫の病気についてまったく知識がないことで、ペットにとって最善の治療方法を選択するのが、大変なことを痛感しました。
さいわいなことに愛猫は元気を取り戻し、今も僕のそばにいてくれます。でも、言葉を話せない動物たちが、人につらさを訴えることができないのは、どれほど苦しいのだろうと胸が痛みました。
もともと僕は動物が大好き。子どものころから犬や猫、アヒルや猿などいろんな動物を飼っていたんです。僕にとって動物たちは大切な存在。言葉を交わさなくても、心は通じています。幼いころ、獣医師になりたいと考えたときもあるほどです。だんだん「動物に関わる仕事がしたい」と考えるようになりました。

将来のイメージが少しずつできるようになったタイミングで、2023年1月からEIR(客員起業家)として、京都大学の子会社である京都大学イノベーションキャピタル株式会社に入社しました。京都大学の研究者の方の素晴らしい研究を、いかに産学連携で実装していくかを命題とする会社だったんです。そこでさまざまな事業や研究について学び、2024年1月、友人である獣医師と一緒に株式会社VetsBrainを立ち上げました。