「ゴミ屋敷にならない程度に整っていたら両立していることにしよう」。そう自分を許したことが49歳で司法試験に合格した第一歩だったのかもしれません。3児の母として家事・育児・勉強のすべてを完璧にこなすのは不可能──。早い段階でそう判断した山本モナさんですが、当初は「自分のわがままで家族を犠牲にしているのではないか」と人知れず葛藤を抱えていたといいます。「理想の母親像」を脱ぎ捨て、自分の人生を掴み取るまでのお話を伺いました。

勝手に身構えて、防衛線を張っていた

山本モナ
司法試験発表で予想以上に反響の大きさに驚いたと語った山本さん

── 3人の子育てをしながら49歳で司法試験に合格した山本モナさん。勉強を始めた当時、いちばん下のお子さんはまだ0歳だったそうですね。子育てと勉強の両立は、相当ハードな日々だったと思います。普段の生活はどんなふうに回していたのですか。

 

山本さん:「どうやって両立していたんですか」とよく聞かれるのですが、両立という言葉は、すべて完璧でなくてもいいと解釈することにして、両立できていると思うことにしました。家事と子育てと勉強、すべてを完璧にこなすなんて、私には到底無理でしたから。

 

だから、まず自分の「合格ライン」をグッと下げました。子どもたちが元気に学校へ行き、ご飯を食べ、家のなかがゴミ屋敷にならない程度に整っていれば、それで十分。すべて完璧にやりとげることが両立ではなく、それぞれ許容範囲で成り立っていれば、両立と考えていました。

 

── 頭ではわかっていても「これまでできていたことができない」という現実を前にするとどうしても葛藤を抱いてしまいそうです。モナさんは最初からすんなり割り切れましたか?

 

山本さん:最初は「自分のわがままで勉強を始めたんだから、家のことを犠牲にしてはいけない」という負い目のようなものを感じていたんです。夫は全然、文句なんて言わないのに勝手に身構えて、「完璧にならないと」「何か言われたらいやだ」と自分で防衛線を張っていました。

 

でも、そうして自分を追いつめていると、ものすごくストレスが溜まって、できない自分に対してイライラしてしまう。結局、夜も眠れなくなって勉強の効率も落ち、何もかもうまくいかない悪循環に陥ってしまいました。「このままではまずい」と気づいたんです。

 

── そこから、生活の組み立て方をどう変えていったのでしょう。

 

山本さん:全部をひとりで抱え込むのをやめました。子どもたちにも「ママは今、試験のために頑張っていて忙しいから助けてほしい。自分でできることはやろうね」と伝えました。家事も、やり始めると細かいところが気になって止まらなくなるので、「寝る前にまとめてやろう」と決めました。食事の支度や送迎といった、母として外せない役割にはしっかり向き合うけれど、それ以外はできる範囲でいい、という考え方に切り替えたんです。

 

食事作りでは、小学生の息子がよく手伝ってくれました。朝、私が自動調理鍋に材料を入れてタイマーをセットしておき、「音が鳴ったら牛乳入れておいてね」と頼んだり、ご飯を炊いてもらったり。おかげでずいぶん救われました。

 

── 時間の制約が大きいなかで、勉強の時間はどのように確保していたのですか。

 

山本さん:すき間時間はすべて勉強に充てました。子どものお稽古の待ち時間にシェアスペースに駆け込んで1〜2時間集中して勉強したり。最初はタイムスケジュールを組んでやっていこうとしたのですが、子どもがまだ小さいので想定通りにはいかなくて。寝かしつけても途中で起きてきて中断されるし、また寝かしつけるのに30分はかかる。だから、かっちり管理するのはあきらめて、その時々でできる範囲をやるスタイルに変えました。

 

子どもが起きている間は集中できないので、勉強は基本的に彼らが寝た後です。長女が夜中に起きてきて、「ママって勉強好きだよね。そろそろ寝れば?」と声をかけてくれることも。本当は一緒に机を並べて勉強する姿に憧れていたんですが、「ママは勉強好きかもしれないけど、私は違うから」と言われて。理想通りにはいきませんでしたね(笑)。