2児の父になり描く新しい夢「もう一度自分の足で」
── 父親になって考えが変わったことや、新たに出てきた思いはありますか。
中村さん:極端な話ですが、子どもが生まれる前は「自分は事故に遭ったけど今まですごく恵まれてきたし、やりたいこともできている。これ以上望むことはないから、いつ死んでもいい」と思っていたんですよ。でも、今はその考えはなくなって、この子たちの成長をずっと見ていたい、幸せになってほしいという思いがすごく強いです。
僕は、泣いている息子を抱きかかえられないとか、お風呂に入れることができないとか、物理的にできないことがたくさんあるんです。でもその反面、この身体でいろんなことに挑戦する姿を子どもたちに見せて、「僕の父ちゃんってカッコいいな」って思ってもらえるような、そんな生き方をしていきたいと思っています。
── お子さんたちに生きざまを見せていきたいと。中村さんは「もう一度自分の足で歩く」という夢を掲げていらっしゃいますが、今はどういう努力を続けているのでしょうか。
中村さん:大きく2つあって、1つは自宅を中心に取り組んでいる、立って歩くためのリハビリです。もう1つが再生医療の治療です。これはお腹の脂肪細胞に含まれている幹細胞を培養して数を増やし、体内に戻すことで神経回路の再生をうながすという治療です。同時にリハビリもしっかり行って機能改善を目指しています。実は再生医療の効果が出てきていて、右の臀部に面積にして500円玉3枚分ぐらいの感覚がよみがえって、触るとわかるようになったんです。それに排泄にかかわる内臓の感覚も戻ってきていて、今はこのあたりに便があるというのが、なんとなくわかるようになってきました。
── すごいですね!「自分の足で歩く」という夢について、どのぐらい現実味を感じていますか。
中村さん:実現しないことはないだろうとは感じています。それがいつになるかはわからないですが、自分が将来もう一度、立って歩いているということは、自信を持って言えますね。父親になってから、自分の足で歩きたい思いがさらに強くなりました。妻と子どもたちと一緒に、家族 4人で手を繋いで歩きたい。その思いが、リハビリの最大の原動力になっています。
取材・文:小新井知子 写真:中村珍晴