異端な人生を歩む母を見て子どもたちの選んだ道は

新開貴子
勉学と子育ての両立を支えてくれた母と

── 新開さんの生き方は、お子さんの進路にも影響しているようですね。

 

新開さん:長女は私立大学の薬学部に通っています。大学2年の長男はハンガリーに留学していて、進級率30人中13人という狭き門を通過して医学部で頑張っています。長男は今、苦労しながら医学を学んでいるので「よくこんなこと40代でやってたな」と言われました(笑)。高校3年生の次男は、将来は建築業をしながら医師免許も取りたいと言っています。 

 

── 32歳から医師を目指し、53歳で医師になって7年。ご自身の人生を振り返ってどんなことを思いますか?

 

新開さん:結婚して子どもを産みたかったし、医師になって人の役に立ちたいとも思っていました。ただ理想と現実のギャップは大きく、5浪目あたりからは「受験は今年で最後にしよう」と諦めかけたこともあったんです。でも、最後まで続けて本当によかった。紆余曲折して、いろいろ経験を重ねたからこそ、患者さんに寄り添える部分が大きいと思っていますし、子どもたちにも私の生き方を見せることができたかもしれません。

 

医師として患者さんが元気になる姿を見るのはもちろん励みになりますが、患者さんの家族に頼られたり、同じ医療現場で働くスタッフとうまく連携ができたりしたときに、とてもやりがいを感じます。ここまでサポートしてくれた夫や私の母、義理の両親や家族にも本当に感謝しています。

 

53歳で医師になった私は、一般的には遅咲きと言われます。それでも、私を必要としてくれる場所で頑張りたい。今は名古屋の総合診療科で内科をメインにしていますが、いつか医療の確保が困難な僻地に行って、困っている人を救いたいと考えています。

 

私は遠回りをして医師になりましたが、だからこそ精神的にも強くなったし、患者さんとともに泣き、笑い、寄り添う診察ができるようになったと思います。せっかく医師になったのだから、たくさんの人の役に立ちたいですね。

 

取材・文/小山内麗香 写真提供/新開貴子