「無理しすぎ」の見極めが難しかった

── とても前向きですね。自身の置かれた状況を悲観せず、よりよい生活を送れるよう気持ちを転換されている印象です。

 

高橋さん:摘出手術のために10日間入院しました。いつもは日中、サポートしている人たちの相談メールなどをずっとチェックしています。でも、このときばかりは一緒に仕事をするスタッフからも、「亜美さん、入院中はメールもスマホも見たら絶対ダメ!絶対に仕事しないでください。ちゃんと休むんですよ」と、全力で止められて。

 

うっかりメールの返信などをしたら、スタッフにめちゃくちゃ怒られるかも…と思いました(笑)。だから、おとなしく病室で静かに過ごしたんです。入院中は外の世界と遮断され、仕事のことはいっさい耳に入れませんでした。ふだんの私は、笑ったり怒ったり、悩んだり、めまぐるしい忙しい毎日を送っています。でも、入院中は、みずからと向き合うことができました。そうしたら、なんだか生きていることって、それだけでありがたいんだなと感謝の気持ちでいっぱいになったんです。

 

高橋亜美
入院中も笑顔で過ごした

しかも、周囲には支えてくれる人がたくさんいます。ベッドで寝ている間も、スタッフが仕事をしてくれているし、頼りになるお医者さんや看護師さんもそばにいてくれます。「本当にありがたい…」と、誰かに拝みたくなったくらい。雑念なんてどこかに消えてしまい、このまま浄化されるんじゃないかとさえ感じるほどでした!これまで生きてきたなかで、いちばん清らかな存在になれたんじゃないかと思います。

 

── 子宮や卵巣を摘出することに不安はなかったのですか?

 

高橋さん:がんと聞いたときは「悪いところはさっさと取っちゃおう」と、割り切っていたんです。でも、入院を経て、自分の体にも感謝することができて。摘出する子宮や卵巣に対して、「これまで頑張って役目を果たしてくれたんだね。ありがとう」と自然に思えました。ずっと黙って動き続けてきてくれた自分の臓器が、愛おしくなったんです。

 

── 入院期間は、とても特別な時間となったのですね。

 

高橋さん:今回、がんになったことは、自分の体との向き合い方を見直すきっかけにもなりました。これまでも、きちんとセルフケアをしているつもりではありました。でも自分のこととなると、「無理しすぎ、頑張りすぎ」のラインを見極めるのはとても難しいんですね。「意識して立ち止まり、休みをとらないといけないんだ」と感じました。

 

全摘出したとはいえ、手術で取り切れなかったがんが残っている可能性もあります。こうしたがんをなくし、再発を予防するため、抗がん剤治療も行うことになりましたが、術後に補助療法として抗がん剤治療を行うのは一般的なことのようです。

 

── 術後の抗がん剤の治療はどれくらいの期間行いましたか?

 

高橋さん:トータルで7か月くらいです。1日かけて点滴を投与し、約3週間、間を空けて、再度、点滴をすることを繰り返しました。治療を受ける前は、抗がん剤治療はとても苦しいイメージがあったので、仕事はすべて休むつもりでした。

 

でも、実際に治療が始まってみると、さいわいなことに体にはほとんど影響がなくて。ふだんと変わらず元気だったから、仕事を続けることにしました。SNSでも、がんで治療中であることを公表したんです。早い段階で周囲に伝えたほうが事情をわかってもらえると考えたからです。実際、公表後は多くの励ましをいただき、とても力になりました。

 

治療によって髪の毛は全部抜けてしまいましたが、具合が悪くなったのは最後のクールのときだけ。思ったよりも体調不良になるようなダメージは小さくて、現在は無事に治療自体を終えることができました。私はがんのことを「トントン」と呼んでいました。呼び方を変えることで、病気との向き合い方も変わったかもしれません。