がんを「トントン」と呼ぶようにしたら
── どんな変化がありましたか?
高橋さん:「がん」という病名は、怖いイメージがありました。それだけ大変な病気ではあるのですが、いざ自分ごとになるとつい身構えてしまって。私は初期で発見できたおかげもあって、そこまで大事ではない感覚だったんです。だから、そこまで「トントン」と表現を変えることで、受け止めやすくなり、気が楽になりました。
「トントン」と名づけたのは、がんが体の内側からノックしてくれたイメージからです。これまで知らず知らずのうちにムリをしていた私に、「頑張りすぎてない?ちょっと休んだほうがいいよ」と合図して、教えてくれた気がします。その合図をしてくれたこと自体、ありがたかったんです。

だから、ただ身構えるだけではなく、気持ちのうえでも上手につき合いたかった。手術や治療のときも「がんの治療中」とは言わず、「今、トントン治療4クール目だよ」などと話していました。すると、私自身はもちろん、周囲もちょっと安心してくれた気がして。
盲腸や尿路結石で病院に行かざるを得ない状況になったのも、体が一生懸命にサインを送ってくれていたんだと思います。もしあの痛みがなかったら、私はきっと病院に行きませんでした。そう考えると、体が必死に私を守ろうとしてくれていたんですよね。
もちろん、こうした前向きな捉え方ができたのは、初期の段階で発見されたからこそです。だから、私の治療に携わってくれた方々にも、感謝してもしきれません。病気というのは不安であり、痛みを伴うことでもあります。でも同時に、これまでの生活を見直し、大切なものに気づくきっかけにもなるんだと感じています。
取材・文:齋田多恵 写真:高橋亜美