コンビ仲？当時はめちゃくちゃ仲悪かった

── お金事情のほか、もうひとつ気になる点が…。相方の村上さんとのコンビ仲は当時どうでしたか？

 

亘さん：めちゃくちゃ仲悪かったですね。いまもいいわけじゃないですけど（笑）。 ネタ自体は村上が書いているんですけど、「俺が書いているのに、おまえは何もしていない」とか言われて。それに対して「そんなことを言われる筋合いはない」と思っていましたし、意地の張り合いみたいになっていましたね。当時は忙しさもあって、お互いイライラしている部分が多くて、やることなすこと鼻につくというか。仕事があったから一緒にこなしていたような感じでしたけど、お互いの存在がストレスになっていたのはたしかです。

 

いっぽうで「嫌いだから辞めます」というのは「ちょっと幼稚すぎない？」と考える自分もいました。解散という選択肢は、嫌なことから逃げたことになるので、それは恥じるべき姿というか。村上も同じように考えていたと思いますね。

 

── ずっと一緒にいたら考え方や方向性の違いは出てきて当然かなと思います。亘さんが「じゃないほう芸人」と言われていたことも、コンビ仲の悪さに拍車をかけましたか？

 

亘さん：「じゃないほう芸人」と呼ばれていたことに対して、村上に「何でおまえだけ」と思ったことはないです。ただ、村上どうこうというより、ファンやスタッフさんに対して、「失礼だな」とは思っていました。「じゃないほう」だからしかたないんですけど、相方がいて、隣に自分がいるのにまったく気づかれないとか。

 

周囲の興味が村上にいきがちだから、「そんな対応をしなくても…」と思ったことは多々ありましたね。たとえば、マイクをつけるのに、村上はすんなり見つけてもらえるのに、自分は探されているというか。そこにいるのに「どこの誰ですか？」みたいな雰囲気を感じていました。

 

それでも「相方が目立つ」のはお笑いコンビ・フルーツポンチとしてはうまくいくので、村上が目立つために自分はどう立ち振る舞うべきか、考えていたのも事実です。「村上のボケには亘のツッコミが必要」とか、一丁前に思っていたので。

 

ボケだけでは笑いやおもしろさって伝わりにくいので、ツッコミが「ここがおもしろいポイントですよ」と第三者に伝える役割を果たす必要がある。フルーツポンチの看板として村上がいれば売れるわけですから、そこを大切に、ツッコミとしての影武者的な自分の立ち位置をつねに考えていました。

 

取材・文／高田愛子　写真提供／亘 健太郎