脳神経外科医の石川久さんによれば、50代くらいから症状の出ない小さな脳梗塞がポツポツとあったり、血流が悪い箇所があったりする人が増えるそう。認知症や脳梗塞のリスクが高まっているということなので、早めの対策が必要です。そこで、著書『100歳まで冴える脳習慣10』でも話題の脳のメンテナンス法と、改善したい生活習慣のコツを教えてもらいました。
脳のメンテナンス習慣は40代からが理想
筋肉は使わないと確実に衰えていきますが、脳も使わないところから衰えます。そして残念なことに、筋肉の細胞と違って、ほとんどの脳の神経細胞は、一度失われると再生しないのです。脳の血流をよくして、脳の細胞に糖と酸素をしっかり供給するのと同時に、脳のさまざまな機能を使っていくこと。この2つが両輪になってこそ、脳の老化予防に効果を発揮するといえるでしょう。
脳には、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった、いわゆる「五感」を通して、さまざまな情報が入ってきます。それらを統合して、自分の考えをまとめたり、判断したりして、どのように行動するかを決めていく、つまり「思考力」も、人が生きていくうえでとても大切な脳の機能です。
そして、どの機能を、脳のどの部位が担っているかについても、これまでの脳の研究によって、ほぼ明らかになっています。私が日々向き合っている脳卒中や脳腫瘍などの脳の疾患も、脳のどの部位に発症するかによって、現れる症状がまったく違いますが、それほどに脳は各部位ごとに役割が決まっています。
たとえば、言葉を発する機能を司る部位に脳梗塞が起こると、運動性失語症を発症しますし、右手の運動を司る領域にダメージを受けると、右手に運動障害が出現します。
また、五感で得た情報を統合して判断する機能を主に担っているのが前頭前野という部位ですが、それは脳の各部位と複雑に連携しています。ですから、脳の機能を衰えさせないためには、五感をバランスよく使うこと。そして、その情報を連携させて判断したり、考えをまとめたりすることを習慣にすることが大切なのです。
記憶も思考も、五感から得られた情報がもとになっています。もの忘れや認知症の予防には、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚をまんべんなく使って、衰えを防ぐことが基本です。