高齢化社会の今、だれもが望むのは「100年使える脳」。これまで開頭手術やMRIの画像診断などを含め、1万人以上の脳を診断し、現在でも年間150件ほどの手術を担当する脳の名医によると、脳の疾患に大きく関わってくるのが「骨盤」なのだそう。『100歳まで冴える脳習慣10』の著者、脳神経外科医の石川久さんに脳の健康を保つ「骨盤」の整え方を教えてもらいました。
脳の名医が注目するのは患者の「骨盤」
「全身の健康を保ち、寿命を健康寿命に近づけるために、骨盤は最も重要な部位だと私は考えます。『脳は全身を司っているが、その脳は全身の健康に支えられている』。これは、かつて頭部に命に関わる重症を負い、5回にわたる手術によって生かされた私が身をもって体験し、さらに、医師として救急医療と全身管理に力を注いできたからこそたどりついた確信です」と言うのは、脳神経外科医で、国際医療福祉大学三田病院の石川久先生。
脳は活動するために大量の糖と酸素を消費しますが、それを供給しているのが脳全体に張りめぐらされている血管です。そして血流をよくするために大切なのが、頭蓋骨から背骨、骨盤へと続く体のバランスだと、石川先生は言います。
「ですから私は外来でも、患者さんが診察室に入って来たときの歩き方や、骨盤の使い方で、患者さんの状態を推察してから診療を進めています。特に、頭痛で来院された患者さんは、背骨や骨盤が歪んでいたり、首の正常なカーブがストレートになる、いわゆる『スマホ首』になっているケースが見受けられます」
脳神経外科医として多くの患者の脳を診てきた経験と、全身管理の向上に取り組んできたなかで、石川先生が強く感じたのは、「脳の健康を保つのは、全身の健康によい日常生活」だということ。もちろんウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は効果的ですが、なかなか時間が取れない、続かないという人が多いのが現実。また急に運動を始めても、腰痛やひざ痛などのトラブルで挫折してしまう人も少なくないと言います。
そこで石川先生がおすすめしているのが、立ち方、座り方、歩き方などの「日常の立ち居振る舞い」を見直して、骨盤を安定させる習慣を作ること。特に気をつけたいのが「姿勢の悪い人」と「座りっぱなしの時間が長い人」。じつは日常生活での活動量が少ないと、脳への血流が悪化し、認知機能の低下が始まっていた患者がいたのだそう。
逆に、骨盤が安定する「立ち居振る舞い」を意識すれば、日常生活の中でも全身の血流がよくなる脳習慣が身につくそうです。