予防医学の専門家が監修したチョコの意外な需要

── アフリカのカカオの産地などでは、貧困が原因で児童労働などの問題があるという話があります。

 

平井さん:私が直接目で見たわけではないのですが、カカオの産地にはそういった問題が今も現実として実際にあるので、自分たちはきちんと生産現場の様子までわかる、フェアトレードのものを原料にしたいと思っていました。

 

視察に行ったタイのランパーンのカカオ農場は、水やりも自動化されていて、遠隔技術で操作されていました。収穫は手作業になりますが、想像よりもきちんと管理されていて、生産者の方も豊かに暮らされているという印象が残っています。その姿を見て安心できましたし、「ここから来たカカオ豆だったら間違いない」と思いました。ブランド設立1周年を前に、ベネズエラのチュアオ産のカカオ豆でも商品作りをスタートしたのですが、現地では教会の前にカカオ豆を撒いて、歌いながら乾燥させる伝統があるそうです。とても幸せな光景ですよね。

 

── チョコレートを食べるときに、カカオ豆の産地まで気にしたことがありませんでした。

 

平井さん:生産過程でいろいろな国の豆をブレンドしている場合も多いですし、たとえばベルギーの工場からチョコレートになった状態のものを輸入してベルギー製造と表記している場合もあります。問い合わせたら答えてくれるのかもしれませんが、カカオ豆がどこで生産されたのかまでは表記上わからないこともあります。私たちは視察を通じて現地の気候や日差し、生産者の笑顔や優しさを直接感じたことで作る方向性が決まりましたし、現地で感じたカカオの力をそのまま活かしたチョコレートにしたいと思いました。

 

── 予防医学の専門家がチョコレートの監修を担当。平井さんたちも栄養学などについて学び、認定予防医学士の資格を取得されたそうですね。乳酸菌やビタミンなどが入ったチョコレートが出来上がりましたが、お客さんの反応はいかがですか。

 

平井さん:自分たちがほしいと思える商品を作ったものの、最初は受け入れてもらえるのかとても心配でした。でも、その想像を上回ってみなさんに喜んでいただけているので本当に挑戦してよかったと思っています。

 

大腸に疾患があるお子さんがいらっしゃるお父さまが、添加物などが入っていないチョコレートを買いたいとポップアップショップに尋ねてきてくださったことがありました。お医者さまの奥さまに成分を見ていただき、「これだったら大丈夫」とたくさんお買い求めいただいて。疾患をお持ちの方向けではなく、美と健康を意識して作ったものだったのですが、成分にこだわったことで需要の広がりを感じましたし、とても喜んでいただけてうれしかったです。

 

── ブランドを通じてみなさんに伝えたいことを教えてください。

 

平井さん:チョコレートを食べる時間を明日の自分に良いことをする時間に変えてほしいという思いで作りました。私が仕事中にチョコレートに支えられていることが多かったように、チョコレートを通じて仕事や勉強に家事や育児など、日々忙しい時間を過ごしている方の応援ができたらいいなと思っています。

 

 

チョコレートブランドの代表というアナウンサー以外の仕事に挑戦したことで、「自分の伸びしろが増えた」と話す平井さん。一緒に働く友人とは、子育てのスケジュールを考慮したうえで仕事の予定を組んでいるそうです。子育て優先で考えていても、週末や夕方から仕事が入ってしまうこともあるそうですが、携帯に出られないときは「テレパシーを送って」とお願いすることもあるといいます。娘さんは働く母の姿を好意的に見てくれているそうで、「娘から相談されたときに頼りがいのあるママでいたい」と話してくれました。

取材・文/内橋明日香 写真提供/平井理央