美や健康にいいチョコレートがあったら
── 数あるスイーツのなかでも、チョコレートをたくさん食べることにはなぜか罪悪感があります。
平井さん:チョコレートを自分たちで作ってみてわかったことは、チョコレートのなかには砂糖が多く入っていたり、加工しやすくするために油を使用していたりしていることもあるということです。
そのぶんカロリーも高くなるので、私も含め、みなさんが本能的に持っている罪悪感というものがある意味で合っているんだと思います。チョコレートの原料であるカカオ自体は体にいいものなのですが、どうしても加工の過程で加えられる付属のものによって、健康への価値が下がってしまうことが起こってしまうのだと思います。

── ちょうど1年前にチョコレートブランド「VIVID CACAO」をローンチされましたが、なぜご自身でチョコレートを作ろうと思ったのですか。
平井さん:一緒にチョコレートを作っている友人はフジテレビの同期で、彼女との他愛無い会話からスタートしたんです。「チョコレートが好きなんだけど、食べると腹荒れや体重が気になるんだよね」という話を何げなくしたのがきっかけで。彼女も同じ思いを抱いていて、「栄養価が高くて罪悪感なく食べられる、むしろ食べたほうが美や健康にいいと胸を張れるようなチョコレートがあったらいいよね」という話をしました。
そういうものってなかなかないし、自分たちで作ることはできるのかなと、そこからチョコレートがどうやって作られるかを調べ始めました。市民向けの講座を受けてチョコレートの製造について学び、自分たちが作りたいものについて話し合いを重ねました。
── 実際に形にするのは大変だったそうですね。
平井さん:自分たちの思いはあっても、実際に作ってくれる工場がなければ完成しません。検索で見つけた工場のHPの問い合わせ先から連絡したのですが、なかなかお返事がなかったので電話もかけました。月に何件も「こういうチョコレートを作れますか」という問い合わせがあるそうで、なかなか新規の方の対応までできていなかったそうです。アポイントをとって直接お会いしたら、なんとその場で「やってみましょう」というお返事をいただけたんです。実は社長は私たちの相談を断るために会ったそうなのですが、あまりの熱意に圧倒されて引き受けたと言われました(笑)。そのくらい熱が入っていたと思います。
── 原料にもこだわり、カカオの産地まで視察に行ったそうですね。
平井さん:タイのランパーンという村に原料となるカカオの視察に行きました。自分たちが作るチョコレートで人を幸せにしたいという思いがあったので、製造のどの過程においても不幸せな人がいないようにしたかったんです。生産からみなさんにお届けするまでのすべてのライン上が幸せであってほしい。しっかりとカカオの生産現場も自分たちの目で確認して選んだものを使いたいという気持ちが強くありました。
── 現地での発見はどんなことでしたか。
平井さん:実際に行ってみて本当によかったと思うのは、それがチョコレート作りのアイデアに繋がったことです。カカオの豆の部分を噛むとチョコレートらしい苦味と酸味を感じるのですが、採れたての生のカカオの果肉「パルプ」は白くてぷにぷにしていて、食べると甘酸っぱくライチやマンゴスチンのような南国のフルーツの味わいがしました。初めて果肉を食べましたが、「カカオってフルーツなんだ」ということを実感しました。
現地では果肉の部分をバナナの葉で包んで数日発酵させて天日干しし、中のカカオ豆を取り出して輸出しています。発酵中のものはお酒のような香りがしました。日本に入ってくるカカオ豆はすでに乾燥されているものですが、そもそもカカオ豆が発酵食品だということも驚きでした。発酵食品が体にいいということは広く知られていますが、改めて体にいいものということにも気づけましたし、自分たちが作りたいものが確信と自信に変わりました。