あきらめていたのにまさかの自然妊娠

長藤由理花
妊娠前は妊娠している人を見ると過呼吸になってしまったことも…

── つらい抗がん剤治療を経て日常生活に戻られ、闘病中に支えてくれた彼とのおつき合いが続くなかで自然妊娠をされました。ただ、抗がん剤治療が原因で卵子はほぼ残ってなかったそうですね。

 

長藤さん:そうなのです。実は抗がん剤治療が終わった後に、左の卵巣にどれくらいの卵子が残っているか検査をしました。というのも、卵子は持っている数が生まれつき決まっていて体内ではつくることができず、生理のたびに卵子が減っていくだけで増えないそうなんです。抗がん剤治療は悪い細胞を殺すだけでなく卵子にもダメージを与えるので、どのくらい減ってしまったか心配で…。それで検査をしたのですが、せっかく左の卵巣を残したのに卵子がほとんどないことがわかりました。医師によると私の卵子の数では自然妊娠は難しく、不妊治療をしても妊娠は難しいだろうと。再発のリスクがあるにも関わらず卵巣を片方残して希望を繋いだのに、この結果には本当に落ちこみました。

 

── その時点で子どもを持つことはあきらめたのでしょうか?

 

長藤さん:そうですね。子どものいない人生について考えるようになりました。受け入れるまでにも時間がかかり、一時期はマタニティマークをつけている人を見ると、過呼吸になるほどで。それでもようやく受け入れられ始めたころに、自然妊娠がわかりました。私や夫はもちろん、主治医をはじめとする病院の方々も「まさか」という感じで驚いていましたね。それをきっかけに彼と入籍をしたのですが、抗がん剤治療が終わってから半年後のことでした。

 

── 出産に対する不安はなかったですか?

 

長藤さん:もちろん、どんなお母さんでも同じだと思いますが、無事に健康で生まれてきてくれるのか不安はありました。

 

またそれまでは1か月おきにがんが再発していないかどうかの検査をしていたのですが、妊娠期間中は通常の数値が出ない可能性があることから検査をすることができませんでした。そのことに関しては少し心配でしたが、出産後の検査で異常がなかったので心穏やかに過ごすようにしていました。