我慢の限界を感じてひとり向かった先は

── 子育てについてもうかがわせてください。現在、野々村さんには2人の娘さんがいて、長女は大学1年生、次女は高校2年生です。32歳で長女を出産した後は、しばらく子育てに専念するため6年ほどお仕事をセーブされた時期がありましたが、子育て時期の家事や子育ての分担はどうされていましたか?
野々村さん:私が仕事をセーブしていた時期は、私が家事や子育てに関わる時間が長かったです。夫が家にいるときは、子ども達のお風呂は私が入れて、お風呂から出た後は夫が子ども達を着替えさせて…と連携していましたが、夫は土日に営業で家をあけることが多かったし、ほかの日も劇場の出演は主に夜だったので、あまり頼れる状況ではありませんでした。
── 長女と次女の年齢差が2歳と近いですし、さらに子育てはハードになりそうです。
野々村さん:余裕がなかったですね。たぶん、長女が3歳、次女が1歳のころだったと思いますが、あるとき、私が車から脱走したことがあるんです。家族4人、車で出かける時は、娘たちが泣いてグズるたびに私が助手席から後部座席に移動して授乳したり、おもちゃであやしたりしていました。でも、毎回毎回大変だし、夫は他人事のように「また泣いてるでー」と言うので、ある日「なんでいつも私ばっかり!」と我慢の限界を感じて、車が赤信号で停止中に黙ってドアを開けて走って逃げました。
── どこへ向かったのでしょう?
野々村さん:カレー屋です。母乳への影響を考え、授乳中は刺激の強いカレーはずっと我慢していたんです。しばらく外食にも行けなかったので、夫が「今日はラーメン食べてきた」「仕事帰りにみんなで焼肉に行った」という話に日ごろからイライラしていました。そういう我慢も同時に爆発してしまったんです。
私だってラーメンや焼肉、母乳に影響がなければカレーだって食べたい。子どもがご飯を食べるようになると、子どもが食べ残したものを私が食べるので、本当に食べたいものは食べられないわけです。ストレスフルな日常が走馬灯のように頭をかけ巡り、思わずカレー屋に走っていました。食べたいものを好きなように食べる。時間にして1時間ちょっとの話ですが、この1回でこれまでのイライラが解消されました。
── 野々村さんがカレーを食べているころ、旦那さんとお子さんはどうしていたのですか?
野々村さん:夫と子どもたちはそのまま家に帰り、意外と平和に過ごしていて、ちょっと拍子抜けしました。私はカレーを食べて心が満たされたいっぽう、車から飛び出してしまったことに罪悪感を感じていたんです。どこか後ろめたい気持ちで帰宅しましたが、夫は脱走の理由やどこに行っていたかなど聞いてくることはなく、自然に迎え入れてくれました。それがすごくうれしかったし、ホッとしました。その後、夫にも思っていることを伝えられたし。
この一件があってから、ギリギリまで我慢するのはやめて、思ったことはその場で、角が立たぬよう伝えるようにしています。