夫が亡くなって8年。本で経緯を知った息子は

夫が亡くなってから今年で8年を迎えます。現在、せせらぎさんは死別した当事者の拠り所となるようなポータルサイトを開設を目指しながら、心理学を学ぶために大学へも通っています。欠けたものは元には戻らないながらも新しい夢に向けて動き出した今夏、ある出来事が起きました。小学6年生になった長男のけーくんがせせらぎさんの書籍を知ることになったのです。

 

それはあるイベント出展の際に書籍が陳列されていたときの出来事でした。けーくんは出版当初は低学年だったこともあり、当時は書籍に対して特に興味を示さなかったそうです。しかし6年生に成長したこともあり、目につく場所に陳列された書籍を突然、その場で熟読し始めます。

 

「けーくんにはADHDとASDの発達障害があります。最近は漫画なら読むものの、本を読むということは滅多にありません。騒がしく落ち着かない場所だったにもかかわらず、息子はその場に座り込み、長いことその本を読んでいました」

 

ひと通り読み終えた後「泣きそうになった」と本の感想をせせらぎさんに伝えるけーくん。しかし続いて出た言葉は「お父さんが死んだのはお母さんのせいだ」という、あまりに予想外のものでした。

 

おそらく、けーくんの言葉に深い意味はなく、単純にケンカして帰省し、家にいなかったからお父さんは亡くなったのだと、考えなく言ったのでしょう。しかし、夫の死に直面し、もっともさまざまな思いを巡らせたのは間違いなくせせらぎさん自身です。「それが伝わらないもどかしさがたんまりあった」と言います。

 

「たとえば一般の方であれば、相手は言葉にできないつらさも汲み取ってくださるので、詳細を語らなくても共感をしてくれます。しかし、けーくんはそれができないんですよね。事実しか見えない。もどかしさはありますが、それが彼の特性なんです。だから、どれだけひどいことだったとしても、彼は自由に感じていいと思っています。『また前みたいに元気出してよ』『子どものためにも前を向いて』などの、こうあるべきという言葉は、私自身が死別者として周りから言われて嫌なことでしたから」