どう感じても自由だけれど

それでも「心ない言葉をかけられた遺族」と「わが子に意見された親」としての感情はまた別のもの。せせらぎさんはけーくんに「いや、(お母さんのせいで死んだなんて)ないから」と即座に反論したそうです。

 

「大人げないですが、単純に『嫌』だったんですよ(笑)。死別して超特大のストレスを抱えながら、自分の感情や日々の生活を保ち、子どもと上手く関わるのは難しい。『大人として』という感情は捨て、上手に立ち回れなくてもいいから、そのときの気持ちをすべて伝えようと思いました」

 

結果、「気持ちはわかるよ?」「私も思った」と理解は示しながらも、「いっぱい悲しんで苦しんで頑張った人には絶対、言ってはいけない言葉だよ」と諭すことに。読み終えたあとの無邪気な感想だとはわかっていながらも、受けとった側の気持ちを伝えました。

 

「でも、けーくんには私の言葉はおそらく伝わっていないでしょう、わりとすぐまた同じことを言い出しましたから(笑)。ただ、だからこそ含みをもたせず、私の気持ちに気づいてもらえたらという希望ももたず、『私のせいで父親がなくなったわけではない』ということをシンプルに伝えるようにしています。

 

『言わない』ではなく、『絶対に言ってはいけない』と強調しているのは、彼がほかの人のように、状況にあわせた判断が苦手だから。『これだけ守っておけば対処できる』というものを明確にしました。

 

家庭によっては口にしないほうがいいこともあるのかもしれませんが、わが家の場合、気軽に言い合える関係性を大事にしています。『何においても、どう思ってもどう考えてもよし。でも、それを出して誰かに嫌な思いをさせるのはダメ』ですね」

 

発達障害をもつけーくんにかぎらず、子どもに線引きを教えるのは大切なこと。親子関係や人間関係など、誰かを傷つけてしまわないよう話し合っておくことも、ときに必要なことなのかもしれません。

 

取材・文/可児純奈 画像提供/せせらぎ