作り笑いで自分を偽るくらいなら再スタートしたい

── とはいえ、自分の武器を手放すのは相当なリスクもあったはずです。不安や迷いもあったのでは?
才木さん:もちろん葛藤はありましたし、仕事がゼロになる可能性を考えて怖くなってしまったときもありました。でも、自分の心にモヤモヤを抱えながらこの仕事を続けるのは限界だったんです。本当に好きでやっている人と比べれば、葛藤を抱えながらキャラを維持する自分の熱意は伝わらない。見ている人にもそれはわかってしまいます。
作り笑いで自分を偽るくらいなら、いったんまっさらな状態に戻って再スタートしたい。そんな気持ちが強くなっていきました。一歩を踏み出せたのは、筋肉じゃない部分を見てくれる人たちの存在も大きかったです。
── なにか背中を押した出来事があったでしょうか。
才木さん:伊集院光さんのラジオにリポーターとして出演させていただいたときに、「才木ちゃんのすごいところはね、筋肉じゃなくて、何でも頑張れるところだよ」って言ってくださったんです。自分は筋肉でしか見られていないのでは?と思っていたので、このひと言が心に響きました。埼玉県の情報番組のディレクターさんも「ロケでちゃんと結果を出してくれるよね」と頑張りを評価してくださっていて、「私のことをちゃんと見てくれている人はいるんだ」と思えたんです。
やめると決めたら、気持ちがラクになりました。ただ、筋肉卒業を発表するまでの間、本当はもう鍛えていないのに筋肉をアピールしなくてはいけない場面もあり、心苦しさがありました。
──「筋肉卒業」を発表してから、ご自身を取り巻く環境は変わりましたか?
才木さん:ピーク時に比べれば仕事は減ったかもしれないですが、筋肉がなくなっても私にお仕事を依頼してくれる人もいますし、「新しい道を応援します」と言ってくれる人が多くて、すごく励まされました。筋肉卒業を発表してからは、気持ちの変化や武器を捨てる決断について取材を受ける機会も増えて、筋肉だけじゃない部分にも目を向けてもらえるようになったと感じています。