「筋肉ムキムキでかわいい」=「ムキカワ」という新しいアイドル像を確立した才木玲佳さん。しかし自分の武器だった「筋肉」という枠に次第に囚われていくようになって── 。(全3回中の2回)

「筋肉は卒業する」と発表した理由は

才木玲佳
筋肉アイドルとしても活躍した才木さん

── アイドルグループのメンバーを経て、プロレスラーとしても活躍した元「筋肉アイドル」でタレントの才木玲佳さん。そんな才木さんが、みずからの代名詞ともいえる「筋肉キャラ」の卒業を発表したのは2022年。最大の武器を手放すまでには、さまざまな葛藤があったそうですね。そもそも「筋肉アイドル」として知られるようになったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。

 

才木さん:2014年、大学3年生のときに、プロレス団体の応援ユニット『Cheer♡1』に入り、リングでの応援や格闘技大会のラウンドガールを務めるようになりました。ダイエット目的でボクシングジムに通い始めたら、みるみるうちに筋肉がついて。トレーナーさんの勧めもあり、K-1アマチュア大会に出ることになったのですが、その記者会見で二の腕の力こぶを見せたら、会場がどよめいたんです。その反応が心地よくて「筋肉」に目覚めました。その後も肉体改造に取り組み、頭のなかは筋肉一色に。メディアで「筋肉アイドル」として取り上げられる機会が増えていったんです。

 

──「筋肉×アイドル」という異色の組み合わせは、唯一無二の存在感がありました。

 

才木さん:これまでアイドルといえば、「か弱くてかわいい」というイメージがあったと思うんです。でも私はその逆で、「筋肉ムキムキでかわいい」=「ムキカワ」という、世の中の固定概念を覆すような新しい価値観を提示できたと思います。女性ファンの方から「筋肉質の体がコンプレックスだったけど、玲佳ちゃんを見て自分を肯定できるようになった」というコメントをいただいたときは、本当にうれしかったです。

 

いっぽうで、「女の子なのにムキムキで気持ち悪い」とか「顔と体がアンバランス」といったネガティブな声も少なからずありました。もちろん嫌な気持ちにはなりますが、「別にあなたのために鍛えているわけじゃない。私をいいと思ってくれる人もいる」と思って、気にしていませんでしたね。

 

── ストイックに筋肉を鍛え続け、プロレスラーとしても活躍されました。そんななか、2022年に「筋肉を卒業する」との発表が。ご自身の心にどんな変化があったのでしょうか。

 

才木さん:だんだん「筋肉」という枠に囚われているように感じて、息苦しさを覚えるようになっていました。テレビ番組に出演しても、求められるのは筋肉のことばかり。「私は筋肉でしか見られていないのかな…」というもどかしさがありました。もちろん、そのキャラクターでみなさんに知っていただいたので、「そんなことを言ってはダメだ。欲張っちゃいけない」という思いもあり、悶々とする時期がありました。

 

── 筋肉キャラとして差別化できた一方で、今度はその枠に縛られてしまう…。ジレンマを感じていらしたのですね。

 

才木さん:もっと違う一面を見てもらいたいと思っていても、結局、私に求められているのは筋肉で、かといって自分の心に嘘をついて続けるほど、この世界に執着もなくなっていったんです。