街灯の下で待っていた娘の姿が目に焼きついている
── 4人の娘さんがいらっしゃると伺いましたが、働き方を変えて、子育てと仕事の両立はどう変化しましたか。
永井さん:小学校の学童と保育園の両方にお迎えに行くという状況が長く続きました。働き方を変える前は、仕事をしながら子育てをするのは「無理ゲー」だと感じる場面がよくありました。お迎えは6時ですが、5時57分に車の渋滞にはまったときのもう絶対に間に合わないという絶望感といったら…。
結局、間に合わず、担当の方から「次は気をつけてくださいね」と声をかけられた翌日にまた同じ状況になる日もありました。お子さんがいらっしゃる世の働く女性の多くが「これ以上、仕事は続けられない」と思うのは、きっとこういうことの積み重ねで起きるんだろうと身を持って感じました。学童のお迎えに行くのが6時2分になってしまったとき、部屋の電気が消されて外の街灯の下で娘と先生が手を繋いで待っていたあの光景は今でも目に焼きついています。子どもにも学童の方にも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
こういったことが、週休3日で働き始めてからだいぶ減って、親も頼りながら夫婦でお互いのキャリアを継続し続けてこられたと思っています。働き方をライフステージによって柔軟に変えることができれば、もっと働きたいという方は増えると思います。家計の経済的面や、今後20年、30年後に体調面などでどちらかが働けなくなるリスクを視野に入れると、夫がフルタイムで働いて妻が時短やパートで働くより、ライフステージによっては夫婦がふたりとも週休3日正社員で働いている方が私自身はメリットが多いと感じています。
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週休3日を導入するための企業へのコンサルティングや、週休3日で働きたい薬剤師と調剤薬局とのマッチングなどを行う「週休3日薬剤師.com」というサイトの運営している永井さん。休みを増やすことへの理解には「ジェネレーションギャップ」があるといいます。40代半ばころまでの世代は人生で大切にしたいものが仕事だけではないため、男女を問わず週休3日が魅力的に映るそう。人口減少が進む日本で企業が生き残っていくためには、就業希望者のニーズをふまえた働き方へアップデートすることが必要だと考えているそうです。
取材・文/内橋明日香 写真提供/永井宏明