吉本興業に所属し、砂場研究家として砂場の監修などを行っているどろだんご先生。もともとは医療法人の経営企画で管理職をしていた彼女が世界3000か所の砂場を巡るほど砂場の世界にハマっていったわけとは── 。(全2回中の1回)
砂場と出会うきっかけは「保育園落ちた日本死ね」
── 砂場研究家として活動している方は、世界中でどろだんご先生おひとりしかいないそうですね。どんな活動をしているか教えてください。
どろだんご先生:もっとみなさんに土や砂に触れてほしいという思いから、安心して遊べる公園作りの監修や、光沢を放つピカピカどろだんごのワークショップなどを全国各地で開催しています。

公園にある遊具は子どもの心と体の発達に必要な刺激を与えてくれるものですが、そのなかでも特に砂場は、0歳から遊べる唯一無二の遊具だと思っていて、幼稚園や保育園に協力していただきながら砂場が子どもたちにどんな影響があるのか調査を行っています。園の先生は体感的に「砂場遊びが好きな子は想像力が豊かだ」とおっしゃるのですが、その研究結果が世界中どこを探してもないので、砂場遊びを通して空間認識能力や空間把握能力がどのくらい鍛えられているのか、根拠となるデータを集めています。
── この活動を始める前は、どんなお仕事をしていたんですか。
どろだんご先生:もともと医療法人の経営企画で管理職として働いていました。「保育園落ちた日本死ね」というセンセーショナルな言葉が2016年の流行語になり、待機児童が深刻な社会問題となっていた時期に経営陣から「病児保育を備えた保育園を作るプロジェクトの責任者になってほしい」と提案されました。もちろん保育園の立ち上げに携わるのは初めてでしたが、素人ならではの目線で、既存の価値観にとらわれすぎないアイデアを入れ、私自身も楽しみながら取り組みました。
廊下の床1枚貼るにも、先生や子どもたちが給食のワゴンを押しやすい配置にこだわったり、調理の様子を子どもたちの目線からも見えるよう、給食室を半地下に作ったり。当時は使用済みのオムツを家庭に持ち帰る保育園が多かったのですが、病院で排泄物を回収するシステムを利用して、保護者と保育士の負担を減らせるようにしました。
── 素敵な保育園ですね。
どろだんご先生:保育園の立ち上げで何より印象的だったのが、子どもたちの遊び場作りです。園庭の3分の1を占めるような大きな砂場を作ったのですが、砂場の研究のため、仕事が休みの週末にいろんな公園を訪れて文献で調べることが日課になると、いつの間にかすっかり砂場に魅了されてしまって。これが私の砂場との出会いでした。
砂場での遊びを通じて子どもの心と体の成長や、手先の使い方、空間認知能力の発達などの影響があることや、未来ある子どもの教育に携わることにも魅力を感じました。私が子どものころには、親から「汚いから触っちゃダメ」と言われて砂場で遊ばせてもらえなかったのに、今こうして砂場の魅力を伝える活動をしているのが不思議です。大人になってハマってしまいました。