片道3時間かけ絵本塾へ「ほかの趣味はすべてやめた」
── そこではどんなことを学んだのでしょうか?
みやもとさん:絵の構図や絵本の構成など技法的なことを学んだわけですが、通信教育の修了後、OB会のようなものがあって、たくさんの人とつながりを持てたことも大きかったです。あるとき、神戸にある絵話塾(絵本の塾)の存在を知り、片道3時間かけて通うことにしました。絵本作家を目指して切磋琢磨する仲間がいて、集中できる環境だと感じられました。「あと何年生きられるか」と考えると、趣味のゴルフも登山をやめても耐えられる。でも、絵だけはやめられない。だから、絵本作家になるべく、後悔しない人生を送ろうと自分の時間のすべてを注ぐ決意をしました。

塾では直接指導されるメリットはありましたが、同じ志を持つ人たちの中に身を置けたことも大きかったです。20〜60代とメンバーの年齢はさまざま。共通する絵本づくりがなければ、出会わなかったと思います。みなさんの作品に触れ、個性豊かな先生の指導でエネルギーや刺激を得られました。1年間、1回2〜3時間程度の講義に月3回ほど通い、終われば先生も含めてみんなで食事をしながら、絵本談義。技術的な話より、ほかの人が「ふだん考えていること」が聞けて、絵本創作の視点として参考になりました。頭の中で作り出すストーリーでなく、日常のおかしさや不思議さ、そういったことがふと思い浮かべて物語を形作っていく、そんな学びを得たのです。
── 自分の夢に向かっていくいっぽうで、ご家族はどういった反応でしたか?
みやもとさん:妻からは背中を押してもらいました。「美術大学もあるから受けてみたら」と言ってくれたこともあって。結婚してからずっと、絵本作家の夢に対しては応援してくれていて、感謝しかありません。子どもは自分たちのことで精一杯のようで、とくに賛成も反対もありませんでしたね。