「すべてはおばあちゃんになったときのネタ」
── 住吉さんが49歳のときにも「CHANTO WEB」でインタビューさせていただきました。当時は「あまり先のことは計画しない」とおっしゃっていたのが印象的でしたが、今も変わりありませんか?

住吉さん:変わらずですね。幼いころは親の都合で3、4年ごとに引っ越さざるを得ず、「今、先のことを決めたところで、状況が変化したら叶わないこともある」ということを肌で感じながら育ったので、遠い先の計画は今も立てません。ただ、いくつかの思いは、ぼんやりとあります。「高校時代に暮らし、その後長らく家族の拠点となったカナダとの関係を絶ちたくないなぁ、もしかしたら住むかな?住まないかな?二拠点生活とか?どういう形になるか、ワクワクするな」くらいでとどめています。
── 計画しすぎず、ワクワクするくらいでとどめる。素敵ですね。
住吉さん:計画をすごく細かく立てる方っていますよね。40歳ぐらいで家を買って、50歳は貯金いくらになって、とか。私はそういうのを聞くと、気持ちがドヨンとしてしまうタイプで。「そんなの、先の楽しみがないじゃない」と思ってしまうんです。未来に何があるかわからないからこそ、また頑張れる。計画通りにいかないことも多いし、大変なことも起きるけど、わからないからこそ楽しいんじゃないかなと私は思います。
── そんな今の住吉さんが、不妊治療に悩んでいた過去の住吉さんに声をかけるとしたら、どんなことを伝えたいですか?
住吉さん:そうですね…。「大丈夫だよ。つらい思いをたくさんしたからこそ、あなたはこの経験を、目標だった本にまとめて、それを誰かに読んでもらえる。きっと共感してもらえたり『励まされました』と言ってもらえるよ」ですかね(笑)。でも私、祖母譲りの関西人気質で、「すべてはおばあちゃんになったときのネタ」だと思って生きているんです。人生で大変だったことも、終わってしまえば「大丈夫。生きていける」で片づけられる。そういう意味でも、今まで大変だったことや失敗したこと、人生を無駄にしたと思ってしまうような経験も、すべて本のネタになってよかったなぁと思います(笑)。
取材・文/市岡ひかり 写真提供/住吉美紀、講談社