子どもたちに「テイク2」はないから

── ストレッチマンは、毎回、特別支援学校の先生が怪人に扮して登場しますが、先生の演技力の高さに驚きます。

 

宇仁菅さん:先生たちは普段から季節のイベントや発表会の企画をしている方が多いので、怪人を演じても弾けて場を盛り上げてくれますし、演技が非常に上手な方が多いです。僕はこれまで、140回くらい怪人と戦ってきているんですけど、どの先生も素晴らしかったですね。先生方が準備をしてくださる衣装や小道具なども、とても凝っていて感心していました。

 

── 収録は、特別支援学級の子どもたちと一緒に行っています。どんなことに気をつけていましたか。

 

宇仁菅さん:子どもたちにテイク2というものはないので、子どもたちが最初に受ける衝撃や驚きの表情を撮影したいというのを第一に考えてきました。先生扮する怪人の登場する順番は当時のスタッフさんとよく話し合って練りました。最初に怪人に出てもらってからストレッチマンが助けに行くというシチュエーションですとか、ストレッチマンが一度登場するけれど、「朝ごはんを食べていないから」と言っていったん抜けたところに怪人が来ることも。子どもたちの喜怒哀楽がよく出るような順番を考えて撮影をしていました。

 

── 本番一発というのは、舞台での経験が活きそうですね。

 

宇仁菅さん:やはり何度も撮り直すと子どもたちは飽きてしまいますし、ストレッチも繰り返し行っては疲れが出てしまいます。撮影は午前中に子どもたちが登場するシーンを撮り終えて、午後から先生が扮する怪人と私との撮影時間に充てるなど、なるべく子どもたちに負担がないように配慮してきました。

 

── ストレッチマンとして学校に現れたときの子どもたちの反応はいかがでしたか。

 

宇仁菅さん:当時は今ほどネットも広まっておらず、一つひとつの情報が新鮮な時代だったのも影響していると思いますが、私が登場すると、興奮して走って抱きついてくるお子さんなども多かったですね。喜んでもらえることがうれしかったです。

 

── お子さんがテレビに映るということもあって、撮影には配慮も必要だったと思います。

 

宇仁菅さん:初期のころは「子どもを参加させないでください」とか「映さないでください」という声が今よりも多かったです。障がいがあるお子さん向けの番組なので、制作側も僕もどうやって表現していこうかというのは常に悩んで考えてきました。

 

社会的なバリアというものは、地域性であったり、経済的なことであったり、それぞれの抱える心の問題もあって、それをどういうふうに克服していくかは非常に難しいと感じていて。テレビでその子を映さないからといって、活動に参加させないというのは制作側の意図ではありません。やはり、その場にいる「みんな」で活動ができることを最優先にするため、撮影OKな子とそうでない子を紅白帽子などで色分けして、カメラマンが把握できるような工夫をしてきました。番組を長年続けていくにあたって、参加させたくないという保護者の声は減っていき、むしろ積極的な方が増えていったというのは、時代とともに大きく変化したことだなと感じています。