「絵の具こぼれてるよ」子どもに指摘されて膝を見ると

── その状況で、お仕事はどうされていたんですか?

 

ノビさん:そのときは様子を見ながら仕事を再開していました。でも、仕事中にひざに溜まった水が漏れ出てしまったことがあって。忘れもしない2024年の12月でした。新しい商用施設のオープン記念の仕事で、サンタの格好をして子どもたちに立てひざをつきながら風船を渡していたんです。そしたら、ひとりの女の子に「あれ?なんか絵の具こぼれてるよ」と言われて。

 

サンタの赤い衣装だったので気づきにくかったのですが、よく見たらひざに溜まった水が傷口から漏れてきていたんです。手術したばかりで右ひざの裏の感覚が薄くなっていて、まったく気づいていませんでした。新しい施設の白いじゅうたんが血を含んだ液体で真っ赤になって「うわ!」ってなっちゃって…。周囲に子どもたちがいたので、その場では「誰かがこぼしたのかな?」ってどうにかごまかしました。かかりつけの病院も離れていたので、傷口にガーゼを分厚く巻いてイベントだけはやりきって。施設の方には平謝りするしかなかったですが…。

 

ノブ山本
クリスマス前のイベントの様子。この後ひざから真っ赤な汁が…!

週明けに病院に診察に行ったら、「即入院です」って言われちゃって。でも、先輩との2人での営業の仕事が入っていたので「この仕事だけはどうしてもやりたい」とお願いしました。そのころには、膿もたくさん出るようになっていたので、数日間は足に大人用オムツを巻いて過ごしていました。その営業を終えたのちは、結果的に2か月半くらい入院することになりました。

 

── いったい、何が起こっていたのでしょうか?

 

ノビさん:あらためて手術をして調べたら、腫瘍を取った部分に水が溜まり、傷が治るどころかさらに広がってしまっていたんです。そこにばい菌が入って感染症を起こしてしまっていたそうです。

 

── そして、再び入院することに…。

 

ノビさん:そうなんです。この入院はめっちゃつらかったですね…。ひざ裏の穴になった部分に吸盤のようなものを貼って、傷口を洗いながら吸引するという治療をしました。カッピングのような仕組みで治療を促進させて、組織を再生させることができるそうなんですが、その治療自体というより、貼ったものの交換がものすごく痛くて…。1~2週間に1回、経過観察のために貼り直さないといけないんです。

 

しかも、普段はあまり採用されない治療法だったみたいで。治療に使う機器を医師も使い慣れていないのか、説明書を見ながら設定してて…ちょっと怖かったですね(笑)。医療機器メーカーの方が立ち合って、先生たちと一緒に僕まで教わったりして。看護師さんにも「画面長押しでタッチパネルのロック解除できますよ」と僕が教えたり(笑)。

 

── その治療で、穴はふさがったのですか?

 

ノビさん:1か月半くらいその機械をつけて組織は再生してきたのですが、それだけではたりなかったようで…。結局、ふくらはぎの筋肉を皮膚ごと、ひざ裏にあてがうような手術をしました。だから、今の僕の右ひざの裏にはふくらはぎの毛が生えてるんですよ(笑)。それに、ラグビーをしていた影響でふくらはぎの筋肉が大きくて、見た目は膨れていて。「だんだん元の足の形に戻っていくよ」って言われたんですけどね。さすがにだいぶ不便になって、今でも全力で走ることはできないです。

 

── そんなやりかたで穴をふさいだとは…。術後も大変だったのではないでしょうか。

 

ノビさん:すぐには歩けなかったですね。1週間くらい車椅子で過ごしました。そのあと、松葉杖から始まって、歩行訓練のリハビリをしましたが、これでもかなり早いほうだったらしいです。もしかしたら、運動をずっとしていたからかもしれません。ラグビーを11年やっててよかったと思いましたね。理学療法士さんにも「これだけ筋肉があってよかったですね」って言われました。「小さいころにつけた筋肉って貯金なので。そのおかげでふくらはぎの筋肉も大きかったから穴もちゃんとふさげましたね」と。