入院中は「1日1個エピソードトーク」を自分に課して

── 筋肉は裏切らないですね(笑)。これだけの過酷な入院生活のなか、何が支えになっていましたか。

 

ノビさん:芸人の先輩からの励ましが力になっていました。「入院したんやったら、エピソードトーク楽しみにしてる」「看護師さん笑わせろよ」と、芸人ならではのメッセージをくださって。実際、エピソードトークは1日1個はメモするようにしていました。

 

── さすが芸人ですね!印象的なエピソードをぜひ教えてください。

 

ノビさん:僕が入院していたのは大学病院だったので、ドラマで見るような総回診が本当にあったんです。病室の奥のほうから順番に、教授が「指を切断されたとのことですが、リハビリ頑張りましょう」とか「経過は良好ですね。退院も近いですよ」と、患者さんに声をかけて回っていて、自分は何を言ってもらえるのか、ワクワクして待っていました。当時、僕は抗がん剤治療中だったのですが、いざ順番が来たら「山本さん、頑張りましょう!」だけで(笑)。「僕だけコメント薄っ!」みたいな(笑)。

 

── それはちょっと残念でしたね(笑)。病気のご経験を振り返って、今どのように感じていますか?

 

ノビさん:どんな状況でも、自分自身で楽しく演出することって大事なのかなって思いました。ふさぎ込んでもいいことないですし。あと、入院中は目標を持つことって大事だなって。「今日は絶対歯磨きをするぞ」とか「売店でグミを買おう」とか、そういう些細なことでいいんです。何気なくやっていることをひとつずつ頭のなかで明確にしてこなしていくことで、毎日を頑張れたなと実感できました。もし自分の経験が人に役立つことがあれば、今後も発信していきたいです。

 

それと、「俺、まだ芸人として売れてないしな」っていう気持ちが根底にあったかも。売れてもないのに死ねない、という思いはあった気がします。そのいっぽうで、「たかが僕の人生だしな」って、いい意味で自分を軽く考えているところもあって。そういうお気楽さがよかったのかもしれないですね。

 

取材・文/髙木章圭 写真提供/ノビ山本