諦めきれず格闘技の大会に参加。腸管破裂の大ケガを負い

── 大きな病気をして手術を繰り返したあとですから、さぞかし練習も過酷だったと想像します。

 

富松さん:そうですね。家族で温泉に行ったときに、「虐待されてるって思われるよ」って言われるほどアザができてしまって。自分でサンドバッグを蹴っただけでも足にアザができちゃうんですよ。アザが多すぎて「キリンみたい」って言われたこともあります。

 

富松恵美
道着姿で練習中の1枚

── それでも続ける意思があるのがすごいです。なぜ続けようと思ったのでしょうか。

 

富松さん:プロレスラー時代の先輩で、デビュー戦のパートナーでもあった亜利弥’さんがプロレスと格闘技を両立されていたんです。セコンドを務めさせてもらったこともありますし、試合前に料理を作ったらたくさん食べてくれて、「試合前の計測で計量オーバーしちゃったよ」なんて言われたこともありました。2018年に乳がんで亡くなったのですが、大好きな先輩でした。自分も先輩のようにできるところまで続けたいという気持ちがあります。

 

── そんな思いを持ちながらアマチュアとして始めた格闘技で、試合に出ることになったきっかけはなんでしたか?

 

富松さん:習い始めてみると、実力を試したくなるじゃないですか(笑)。そう思っていたころ、2005年の11月に所属していたジムから大会に出ないかと誘われたんです。最初の試合はポイント差で負けたのですが、そこから火がついて。親の仕事を手伝いながら仕事が終わったら毎日ジムに通いました。当時は、「もっと強くなりたい!早くジムで練習したい!」という気持ちが強かったです。

 

── 2006年10月にはプロデビューも果たされました。順調に成績を伸ばしていた2008年、試合中に腸管破裂の大ケガを負ったそうですね。

 

富松さん:試合中に相手の蹴りが腹部に入ったんです。2ラウンドの終盤で普段とは違う痛みがあり、ジムの代表がリングにタオルを投げ込んでくれて(注:リングにタオルを投げ込まれると棄権とみなされる)。 試合後、腹痛を感じながらもいったん着替えていたら、猛烈な吐き気が突然襲ってきて。苦しそうな私を見て、母が「これはただごとではない」と救急車を呼んでくれました。

 

── そんなことがあったんですね…。

 

富松さん:しかも、搬送先が見つからず病院をたらい回しの状況に…。受け入れ先の病院が見つかったのですが、病院に着くと「腹部から出血しています」と言われ、緊急手術になりました。ただ、私は内心「どうしよう。明日、仕事なのに」って考えていました。