つるっとした頭をなで「ママ、赤ちゃんみたい」と

小澤由実
差し入れに病院に来てくれた長女とガラス越しに。近くにいるのに触れられず、せつなかった

── 身体的にもつらかったと思いますが、精神的につらかったことは何ですか?

 

小澤さん:家族と会えない、直接話ができないことです。コロナ禍で面会ができない時期だったので、一時退院の期間以外は会えませんでした。夫や子どもたちが着替えや差し入れを持ってときどき病院まで来てくれるんですけど、直接顔を見て手渡しはできなくて。病室から下の駐車場を見下ろしてガラス越しに手を振るような状況でした。また、スマホやパソコンで白血病について調べていると、励まされるような情報が少なくて落ち込みました。特に急性リンパ性白血病は経験談が少なく、悲しくなるような情報しかなかったので、途中からは見ないようにしました。

 

── 母親ががんになった家庭の場合、髪の毛がない母親を見て子どもがショックを受けるなど、子どものケアも必要だと聞きます。

 

小澤さん:娘が2人おり、当時小学4年生と中学2年生でした。入院してからはテレビ電話で会話をしていたのですが、画面越しに髪が抜けた姿を見るのは衝撃が大きいかと思い、必ず帽子をかぶってテレビ電話に出ていました。初めての一時退院のとき、自宅で帽子を取って「ママ、こんな頭なんだよ」と帽子を脱いで見せたら、娘たちは「赤ちゃんみたいでかわいい」と言って頭をなでるように触れてくれたんです。その言葉や仕草にすごく救われました。後で聞いたら、母親の前でマイナスなことは言わないように気をつかったようではあるのですが、そのときは自然に言ってくれたのでうれしかったんです。でも、やっぱりショックはあったと思いますよ。体重は5キロほどやせて鶏ガラのようになっていたから。

 

 ── ママに心配かけたくなかったんですね。

 

小澤さん:子どもながらに考えていたんでしょうね。長女は、私が入院してから学校に行けない日が何日かあったんです。やはり精神的に負担が大きかったんだと思います。そのときは、自分が病室で何もできないもどかしさからテレビ電話で「どうしたの?学校には行きなよ」「頑張って行こうよ」なんて必死で言ってしまったのですが、いま思うと娘にも休む期間が必要だったんですよね。