元NHK放送局キャスターで、現在はフリーアナウンサーの小澤由実さん。43歳のときに白血病と診断され、7か月におよぶ入院治療が始まりました。抗がん剤の投与が始まると10日間で髪の毛がごっそり抜け、吐き気が続いてあっという間に体重は5キロ減ったといいます。(全3回中の2回)

強い抗がん剤の副作用で吐き気と脱毛が一気にきた

小澤由実
小澤由実さん

── 2022年に急性リンパ性白血病との診断を受け、抗がん剤治療のため少なくとも半年間は入院治療が必要と医師から告げられたそうですね。入院後、具体的にはどのような治療が始まったのですか?

 

小澤さん:私の場合は手術ではなく、点滴による抗がん剤投与の治療でした。入院してまず「寛解導入療法」といって、体中の骨髄に増殖している白血病細胞を強力な抗がん剤で一気に減少させるための化学療法治療を1クール、約1か月受けたんです。その後「地固め療法」といって、抗がん剤の種類を変えてさらに白血病細胞を減らすための治療を5クール(約5か月)受けました。1クール終わるたびに1週間程度、一時退院することができたのですが、完全に退院できるまでは7か月ほどかかりました。 

 

もし抗がん剤がうまく体に入らなかったり、効かなかったりすると骨髄移植に進むんですけれども、私はさいわい入院治療中に抗がん剤のみで完全寛解できたんです。なので急性リンパ性白血病としては最短の治療期間で済んだと言われました。退院後は完全寛解の状態をキープするため、「維持療法」として月1回1時間程度、外来で弱めの抗がん剤を投与してもらっていました。2024年5月に維持療法もすべて終え、いまは3か月に一度、経過観察として病院で血液検査をして数値を見てもらっています。

 

── 抗がん剤を投与していた期間は副作用がつらかったのではないでしょうか。

 

小澤さん:入院後最初の1か月、「寛解導入療法」の時期は白血病細胞を一気に減らさなくてはいけないので、抗がん剤が強力ですし、副作用もいちばん強かったです。まずは吐き気。配膳のワゴンがガラガラと廊下を進む音を聞いただけで、ウッと吐き気がしていましたし、もう何も出ないというくらい吐いて、食べることもままならなかったです。

 

その後に脱毛。本当にごっそり抜けました。抗がん剤を投与し始めて2週間経ったころから抜け始めるんですけど、シャワーしてるときにバサバサッと髪の毛が束でなくなっていき、眉毛もまつ毛も薄くなり…10日間くらいでほぼなくなりました。

 

 ── 吐き気と脱毛…苦しいですね。

 

小澤さん:でもね、それも私は結構、冷静に受け止めていた気がします。髪が抜けるのは覚悟して、病院内でバッサリ短く切ってもらっていましたし、ドラマや映画で見ていたような白血病の治療シーンが私にも来たんだなって。フリーアナウンサーという職業柄、元気になったら白血病について講演することを思い描いていたので、どんなふうにお話ししようかと冷静に考えていた部分はあります。もちろん、夜中に洗面所へ行き、不意に鏡に映る自分を見てギョッとして落ち込むこともありました。でも、生きていれば必ずまた生えてくるものだから「今だけ、今だけ」と言い聞かせて乗りきりました。