「まだ見たこともない孫より、あなたの命」

── 周囲の人に相談はされましたか?

 

夏目さん:母に相談しています。母は「まだ見たこともない孫より、あなたの命が大事に決まってる」と言ってくれました。それはがんになったときだけではなく、高校時代に難病になってから、ずっと言われ続けてきたことでした。もともと難病を発症したとき、お医者さんから「この難病は身体に何かしら負担があると発症する可能性がある。だから、あなたは妊娠・出産すると身体に負担がかかり、難病が重症化するリスクがあります」と言われていたんです。

 

母の中に、出産をきっかけに娘が命を落としてしまうかもしれない、という恐怖がつねにあったのだと思います。私が子宮頸がんになり、実際に子どもができないとなったとき、「もう子どもはいなくていい、あなたがいるだけで十分だよ」と言ってくれて、すごく救われました。

 

あとは夫にも相談しています。そのときは結婚前で、つき合いだして半年のころでした。彼にも「子どもがいなくてもいい、それより亜季に何かあるほうが悲しい」と言われて。もし彼女から子宮頸がんになったなんて告白されたら、逃げる男の人はきっといると思うんですよね。あまりにも背負うものが大きすぎますから。

 

でも、彼は私が子宮頸がんになったことで、「この人を支えなければいけない」と思ったそうです。そこから同棲を始めました。彼はつねに献身的で、私の通院の送り迎えをしてくれました。家事も積極的にしてくれるし、まるで私を支えるために生まれてきたみたい。本当にこんなできた人はいないと思います。そんな彼とは、昨年結婚しました。

 

── 治療はどのように行ったのでしょう。

 

夏目さん:私はリンパに転移していたので、子宮頸部を切除すればすむというわけではなく、手術はせずに放射線と抗がん剤で治療しています。日本のがん治療では、ステージが浅いと手術が選択されることが多いけれど、転移していたり、ステージが進行していると放射線治療と抗がん剤の治療になるそうです。私の場合は進行していて、ステージ3c1でした。放射線治療を毎日受け、1か月半くらい病院通いを続けています。