卵巣が機能しなくなったことで生理がなくなり…

── 経過は順調でしたか?
 

夏目さん:治療で卵巣が機能しなくなったことで当然、生理はなくなり、更年期障害のような症状が急にやってきました。私の場合、身体的なものより精神面がつらかったですね。まだ若く、それまでたくさんあった女性ホルモンが急激になくなって、女性の更年期によくある「心の乱れや精神の揺らぎ」といったものが、一気にやってきた感じです。

 

とにかく怒りがすごかったですね。心のバランスが上手くとれず、ピリピリして感情が制御できないんです。でも、当時は自分自身あまりよくわかってなくて、気づいたら「キーッ!」とブチギレている感じでした。夫婦関係で「奥さんがいま生理だから機嫌が悪くて」なんて、よく言いますよね?それをもっとひどくしたような状態だったと思います。お腹にシートを貼ってホルモンを皮膚から吸収させるホルモン治療もしたけれど、あまり効果を実感できずにやめました。だからメンタルの不調はしばらく続いていたと思います。

 

あと放射線治療の症状で、「大腸の剥がれ」もありました。放射線を子宮や腔内に照射していくので、大腸の粘膜が炎症し、損傷を起こすことで剥がれて、大量に出血するんです。お腹が痛いと思ってトイレに駆け込むと、生理の血の塊のようなレバー状のものがどろりと出てきます。放射線科のお医者さんに相談したら「放射線治療の後遺症でなすすべがなく、つき合っていかなければいけないこと」と言われました。これはつらかったですね。人によっても違うようですが、私は1年くらいその症状が続きました。

 

── がんを乗り越え、何か変わったことはありましたか?

 

夏目さん:がんの治療をはじめた翌年、2015年に寛解といわれました。そのとき、がんの啓発活動をしているNPOに自分からアタックしました。「私も子宮頸がんの経験があるから参加させてほしい」と伝え、一緒に活動をはじめたんです。活動の一環として、学校で講演をするようになりました。「子宮がん検診を受けましょう、子宮がんのワクチンを接種しましょう」というのが講演の主なテーマです。それが議員への第一歩になりました。

 

 

子宮頸がんは寛解したとはいえ、難病の全身性エリテマトーデスはいまも抱えています。そんななかでも夏目さんの行動はアクティブです。アイドル活動を経て、いまは区議会議員として子宮頸がんワクチンの啓発活動なども行っています。28歳と若くして出馬し、自身の経験を元に活動を続けている原動力になっているのは、がんを告げたときに逃げずに同棲、結婚にまで至った夫の存在だそうです。

 

取材・文/小野寺悦子 写真提供/夏目亜季