別れるなら「俺は裸でいい。全部持ってけ」

── これまで、夫婦関係の危機はありませんでしたか。

 

清水さん:昔あったよ。別れる別れない話までいったね。妻は「お金は1億もらいます」って言ってたんだけど、そのとき言ったんだ。「清水アキラと別れるなら、1億なんて言わず全部持ってけ」って。「俺は裸になっていいから、何から何まで全部持っていっていい」って。遠い昔の話だけどね。夫婦で揉めることがあっても、別れず元に戻る決断をしたのなら、その話は済んだこと。絶対あとに引きずらず、その話は2度としないほうがいいと思う。

 

相手に「これだけは許せない」っていうことがあっていいと思う。「許せないけど、1回だけはチャンスをあげる」って思ってそう決めたなら、それ以降は何かの拍子に「あのときこうだったよね」なんて言わないのも大事だと思う。

 

清水アキラさん
台湾を訪れた清水アキラさん

── そこでうっかり過去の話を口にしたら、また同じ話がぶり返される可能性がありますもんね。

 

清水さん:結婚っていうのは約束だと言ったけど、簡単に約束を破るのはダメだと思う。それに、この人との約束は守るけど、こいつとの約束は破っていいなんて、人間を物差しで測るようなこともしちゃいけない。それは仕事でも家庭でも同じ。人前で「あの仕事に3時間遅れて行った」なんて話を自慢気にするやつがいるよね。下っ端でも大御所でも、それは絶対によくない。どんな世界でもみんな忙しいなかで集まってくれているんだからさ。仕事がきちんとしているやつは、家庭もきちんとしているよ。家族から信頼されてない人は仕事もできないよ。やっぱり家庭がいちばんだからね。あれ、うちのスタッフに笑ってる人がいるぞ(笑)。

 

── 仕事も家庭も大事にしている清水さんですが、妻のめぐみさんと一緒に仕事場に行くこともあるそうですね。

 

清水さん:「来月、三重県の長島温泉でコンサートがあるから、温泉入りにおいでよ」って誘って、「どうやって行けばいいかな?」とかそんな話を日々してるよ。先日、宮城県で事務所の所属歌手のコンサートがあったときも妻は前泊していたし、こないだ息子と一緒にやったライブも見に来ていたみたい。でも、うちの妻は裏方が好きだから、裏からそっと来て、そっと帰るみたいな感じ。かといって、お弁当を甲斐甲斐しく手作りで持ってきてくれるようなタイプではないよ。お土産にいなり寿司があったら、「私にもひとつちょうだい」って(笑)。

 

── そのほうがお互いに気を使わず楽しそうですね。今後、ご夫婦でどのような人生を歩んでいきたいですか。

 

清水さん:お互いに気苦労がない関係だね。気づかいはするけど、気苦労はない。ふたりのシワとシワを合わせて幸せという言葉がすごく好きなんだけどさ。若いころの妻はもちろんきれいだった。今もきれいだけどね。でも、年取った今も好きだと思える関係なのがいいよね。

 

「今日は調子どう?」「うーん、右の足から腰まで全部痛い」なんてさ、こんなやりとりがリアルな歳になったけど、好きなんだからいいんだよ。そんな関係をこれからも続けていけたらいいなと思うよ。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/清水エイジェンシー