ものまねタレントの清水アキラさんは、夫婦別々に暮らす「卒婚」をしたことで話題になりました。念願だった田舎でのひとり暮らしもわずか1年で解消してしまったわけとは── 。(全3回中の2回)

還暦の節目に「田舎でひとり暮らしを」

── おしどり夫婦として有名な清水さんご夫婦ですが、お子さんたちが手を離れたタイミングで、夫婦それぞれの自由を尊重するため、別々に暮らすことを決めたそうですね。

 

清水さん:60歳で還暦を迎えたときに、何かふんぎりみたいなものをつけたくなった。それまでも実家がある長野と東京を行ったり来たりしていたんだけど、田舎に腰を据えて暮らしてみたくなったんだよね。

 

清水アキラさんご夫婦
「お似合いカップル」新婚当時の清水アキラさんご夫婦

スキーに行ったり、釣りに行ったり、山登りなんかして暮らすのもいいなって。生まれ育った長野は東京と空気が全然違うんだよ。大自然に囲まれた生活は最高だろうなと思って妻も誘ったんだけど、嫌だって言うんだよね。

 

── 妻のめぐみさんは、なぜ嫌だと言っていたんですか?

 

清水さん:「虫も苦手だし、スーパーやコンビニが近いところがいいから、東京にいたい」って。長野には俺の母が亡くなってから誰も住んでいない実家があって、ちょくちょくリフォームをして囲炉裏や露天風呂なんかも作ったから、住みたくなっちゃってね。

 

でも嫌だと言ってる妻を無理矢理連れてくるわけにはいかないし、「じゃ、あなたは東京にいて、俺は長野に行くね」って、二手に分かれることにした。幸せという同じ船に乗っているのは今までと変わらない。でも、周りからは別居しただの、離婚するだの騒がれて大変だった。ケンカしたわけじゃないし、仲が悪くなったから距離を置きたいとか、そんなんじゃなかったんだよね。

 

── 夫婦それぞれ、長野と東京で暮らすことを「卒婚」と表現したのはなぜですか。

 

清水さん:友達から「それって卒婚じゃない?」って言われて。もう卒婚って言葉があった頃だったから、「そうか、言われてみたらたしかにそうだよね」って納得して、卒婚するって言った。別居じゃなんだか冷たい感じがするじゃない?俺が好き勝手して実家で暮らすって言ってるんだから、その間は妻も自由に暮らせたらいいなっていう思いもあったよ。

 

── 実際に「卒婚」をされてみていかがでしたか。

 

清水さん:いいですよ〜、静かに絵を描いて…なんてね。絵なんて3回くらいしか描いてないよ。やっぱり一緒に人がいないと絵って書けないんだよね。ひとりで釣りに行っても、スキーに行ってもつまらなかった。誰かと一緒に、「第2リフトで集合して、そのあとはここ行ってみようか」とか相談しながらやるのがおもしろいんだよね。それにひとりだと家でも何にも決まりがないからさ。何にも決める必要がない。お腹が空いたら作って食べて、風呂も好きなときに入る。自由って、いっけんよさそうに見えるけど、メリハリがないんだよね。

 

普段の仕事はメリハリしかない。何時に集合して、何時から打ち合わせを始めて、何時に終わるから次の予定は何時から始められるって。プライベートくらい、自分の好きなときに好きなことをして、好きなときに終わってもいいかなと思ったけど、やってみたらつまらなかった。

 

── 生まれ育った故郷ということもあって、長野には知り合いもいらっしゃると思います。

 

清水さん:幼馴染も先輩も、もちろんいるよ。でも先輩っていくつになってもずっと先輩なんだよ。学年が1個しか違わないのに、年取ってもずっと先輩は先輩で、後輩は後輩。「俺んちに遊びにこいよ」「はい!わかりました!」って、絶対に追い越したり追い越されたりすることはないんだよね。それにもうこの年になって新しい出会いや友達ができることもなかなかない。もしあるとしたら、その人は宇宙人だって思った方がいいかも。結構、地球に来ているらしいよ(笑)。それくらい珍しいことなんだよ。そんなこんなで、妻とは毎日電話をして、週末になると洗濯ものを持って、東京の家に車で帰って来てたんだ。俺も甘いよね。

 

── 妻のめぐみさんは、何も言わず洗濯ものを洗ってくれたんですか?

 

清水さん:そうそう。黙って受け取って、洗って戻してくれた。俺、洗濯の仕方知らないんだ。ふんわりするやつを洗濯機のどこに入れるとかも知らないし、脱水もどうやってかけたらいいのかわからなくてさ。

 

── ほかの家事はどうされていたんですか。

 

清水さん:ご飯は作れるけど、洗い物はうまくできなかった。でも長野ではいちおう、やってみたんだよね。洗剤つけて皿を洗って、それをすすぐ。でも、そうするとまた別の皿が汚れちゃって。ダメだね。

 

妻から「1回1回すすぐんじゃなくて、まず全部洗っちゃってから、そのあとすすぐのよ」って教えてもらったんだけど。「そうだよなぁ」って頭ではわかるんだけど、うまくいかない。それに、妻は食事を作りながら、その合間に洗い物を終わらせていくらしい。俺は、最後の最後でいっぺんに洗ったらいいのかなって思うんだけど、妻はそれは嫌なんだってね。

 

── わかります。洗い物が溜まっていくのが嫌なんですよね。

 

清水さん:難しいな。でも自分でやってみたら、どんなに大変なことを妻が長年してくれていたのか、わかったね。