猛暑の影響で水泳の授業を学校のプールで実施できず、自治体や民間のプールを利用する小学校が増えています。そのいっぽうで、実施前に安全管理上の確認事項が多く、教員の負担が増えることも懸念されています。プールカードをアプリで管理する動きもありますが、現状は紙のプールカードを採用している学校が大多数を占めます。学習環境のデジタル化が進むなか、学校と保護者間の連絡の現状を取材しました。
「絶対に忘れちゃいけない」保護者の声
福岡県福岡市在住で、3人のお子さんがいる花村都さん(40歳仮名)。この時期、小学生2人分のプールカードを手書きで記入しています。

「プールカードは前日に準備できるものではないですし、子どもの支度と自分の出勤準備をしながら朝書くのでバタバタします。プールカードには、日付を書いてプールに参加できるかどうか、できない場合はその理由を選択肢の中から丸をつける項目があり、保護者が押印かサインをする欄があります。プールに入れない場合は、その理由を別途、連絡帳に書く必要があります。印を忘れてしまって娘がプールに入れなかったこともあったのですが、特に学校からの連絡はありませんでした。子どもは学校のプールを楽しみにしているので、絶対に忘れちゃいけないというプレッシャーがあります。プールカードは先生の印鑑が押されて戻ってくるので、授業前に1枚1枚確認するのは大変だろうなと思いますね」
教員と保護者の負担を減らそうと、プールカードをデジタル化した会社があります。ドリームエリアが運営する連絡網サービス「マチコミ」は、連絡帳をデジタル化し、学校と保護者の連絡を行うサービスを提供するアプリで、全国の小学校のおよそ3割が利用しています。このアプリに2023年から追加されたのが「プールカード機能」です。アプリの開発を担当する田山大介さんは、「プールカード機能」の開発背景にはコロナ禍が影響していると話します。
「コロナ禍で、集団生活を行うお子さんの体温チェックが毎日、必要になりました。2020年4月に体調管理をデジタル化すべく、アプリに体温やその日の体調を記載する機能を作りました。教員のみなさんが日々の業務で忙しいということもニュースになっていましたので、働き方改革に貢献したいという思いから、2023年にこの機能をプールカードに応用することにしました。
メールの配信や連絡ノート、お休み連絡などは無料で利用できますが、プールカード機能は有料版の契約が必要になります。利用していただいている学校からは、『非常に助かっている』という声が多く寄せられていて、この機能を利用したいという理由で毎年夏の時期だけ有料版に切り替える学校もあります」

有料版のアプリの利用料は人数で変わるといい、ひとつの契約で200人が利用する場合は月額7600円(税込)で、300人が利用する場合は1万900円(税込)です。ひとり当たりに換算すると月額30円台の利用料ですが、費用を学校や自治体の予算、PTAが負担するのかは学校ごとに変わってくるといいます。
「幼稚園や保育園など、ある程度、規模が小さい場合は、現場の判断で利用していただいているのですが、小学校以上になりますと人数も多くなり、教育委員会や保護者への説明なども発生してくることから、利用を始めるまでのスピード感が鈍くなっていると感じております。また、全員が利用できることが前提となりますので、スマートフォンを利用していない家庭への配慮も必要になってきます」
プールカード機能を利用すると、生徒の体温や体調、水泳の授業への参加の可否をひと目で確認することができ、プールカードのような受け渡しや確認の手間が省けるそうです。
「プールの授業は、安全面への配慮から保護者の承認が必要となります。現在では、民間のスイミングクラブなどに授業を委託する学校も増えていますが、学校のプールを利用している学校もまだまだ多くあります。これまでは教員が1枚ずつプールカードを確認し、印鑑を押して集計をする作業がありましたが、出欠確認をデジタル化することで、教員が安全管理や水泳指導への準備に時間を割いていただけると思います。また、朝の忙しい時間帯にプールカードに手書きで記載する保護者の負担も減らすことができますし、印鑑の押し忘れや日付間違いなどの不備、紛失などでプールの授業に参加できないという事態も防げます」