ヤングケアラーを公表したワケ

── 2014年、「ヤングケアラー」(家族にケアを要する人がいる場合、本来大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども)だったことを公表されました。どういう思いがあったのでしょう?

 

松村さん:「ヤングケアラー」という言葉が出てきて、それで苦しんでいる人がいることを知ったからですね。僕の経験を語ることで認知が少しでも広がり、手を差し伸べてくれたり、理解してくれる人が増えたりすればと思いました。

 

僕が知ったヤングケアラーには、介護のために進路や夢を諦めた人がいます。僕は俳優としてやりたいことをやらせてもらっていたから、そういう意味では本当に恵まれていました。

 

ヤングケアラーとして悩む当事者には「ひとりで抱え込まないでください」と伝えたいです。僕自身、叔母家族や事務所の社長、医療や介護の専門家…たくさんの人に支えてもらい、祖母の介護を続けてこられました。弱音を吐いていいし、誰かを頼っていいんです。自分が壊れてしまったら、ケアされる人も一緒に壊れてしまいますから。思い詰めず、どうか周囲に助けを求めてほしいと思います。

 

 

祖母の介護を行いながら、30歳から本格的に始めた「書」の活動にも力を入れていった松村さん。2005年の東京書作展では「内閣総理大臣賞」も受賞する腕前です。俳優業とは違って、「いい作品ができたときは、自分でも『ザワザワ』とした手ごたえがあって、自信が湧くんです」と、書の魅力を明かしてくれました。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/松村雄基