抗がん剤の副作用「本当に1日が長かった」

本田景子
抗がん剤治療を受ける本田さん。水色やピンクなど多彩なウィッグを付け、前向きに治療に取り組んだ

── シーズン終了後の2024年2月にアメリカで手術を受け、3月から3か月半、計6回にわたって抗がん剤治療を受けました。薬の副作用はやはり大変だったのでしょうか。

 

本田さん:当初はステージ1だからしこりを手術で取って終わりだなと思っていたので安心していたんです。でも遺伝子検査の数値が悪く、再発の可能性が高いからと抗がん剤6回、放射線30回が必要ということになって。

 

なによりも抗がん剤の副作用で髪が抜けることが本当に受け入れられなかったですね。髪はチアリーダーにとって命なのに。今は技術が進歩していて、クーリングキャップといって、頭を冷やすことで血流の流れを遅くさせ、毛根に対する抗がん剤のダメージを減少し、脱毛を抑える装置もあるのですが、やっぱり抜けてしまうこともあるようで。何度も自問自答しましたが、それなら坊主でもいいんじゃないかって。

 

最終的にいずれ髪は生えてくるだろうし、一生丸坊主になるわけでもないし、がんと戦った証、ひとつの経験として残せるかなと思って抜け落ちる前に丸刈りにしたんです。最初から坊主ならショックが少ないし、潔いし、自分らしいなと思って。実際、丸刈りにしたときは「まるこめくん」みたいでこれはこれでかわいいと思っていました(笑)。

 

── 髪が抜ける以外の副作用は想像以上だったと聞いています。

 

本田さん:抗がん剤の副作用がつらいとは事前に聞いていましたが、髪が抜けるとかその程度の知識しかありませんでした。1回目の副作用が本当にひどくて骨の痛みが激しかったんです。骨の中心がズキズキと痛くてうずき、全身の骨の痛みがひどすぎて歩けないほどでした。赤ちゃんのようにハイハイしてトイレにも行っていたくらいです。

 

それに吐き気がすごかったですね。気分が悪くて、頭も痛い。何も食べる気がしないし、食べられないし、お腹もすかない。気持ち悪くてトイレに行っても吐けず、ベッドに戻るまでに力尽きて床で寝てしまうことがありました。そのつらさに耐え続けるのが苦痛でしかなかったですね。ふと時計に目を向けると「まだ1時間しか経っていないんだ」ということもしばしばで本当に1日が長かったです。

 

── 3か月半にわたる抗がん剤治療が終わって復帰するまでは、治療中とは異なる苦労もあったのではないでしょうか。

 

本田さん:治療をしていたときは毎日朝晩1時間ずつウォーキングをしていましたが、治療中に心拍数を上げることはあまりしていなかったので、復帰したときは踊って突然、心拍数が上がることに体がびっくりしていました。もともと体力には結構、自信があるタイプだったんですけど、体力がかなり落ちているなということを実感しましたね。

 

昨年10月のNFLのがん撲滅キャンペーンの試合にチームから招待され、フィールド上で数万人のファンのみなさんの前で祝福されました。また12月にはJaguars30周年を祝う5年に一度のAlumniゲームがあり、1年ぶりにゲームの舞台に戻りましたが、フィールドに足を踏み入れた瞬間、鳥肌が立ち涙がでました。

 

がんを宣告されたときから復帰することだけがモチベーションでしたし、それだけを考えて治療に立ち向かっていましたが、心の底から治療を頑張ってよかったと思いましたし、元気に戻れてよかったと思える場所があることが本当にありがたかったです。現地のテレビ局からも取材を受け、ニュースに取り上げていただきました。感無量です。

 

── チアリーダーとしてゲームのフィールドに戻るという明確な目標があったからこそ、苦しい治療も過酷な現実にも向き合い、乗り越えられたんでしょうね。

 

本田さん:治療を通じて、目標がないと人は頑張れないと今回あらためて感じました。また、家族だけではなく友だちやファンの皆さん、いろんな方々応援してくれたことも大きな支えになりました。私がSNSで病気のことなどいろいろ発信してきたのは、同じ境遇にある人に情報を共有し、何かその方々の役に立つことがあればという思いもあったんです。あとは「一緒に頑張りましょう」「乗り越えましょう!」という思いも。