自分が選んだ道「後悔はしていません」

本田景子
シャークスで活躍中の本田さん。治療中も復帰を見据えて、日課のウォーキングやトレーニングも続けた(撮影/Brandon LaRochelle)

── 大病を経験されて価値観や生き方に対しての考え方で変化したところはありますか。

 

本田さん:私は性格的に無理しすぎるところがあるのでこれまで気がつかないうちに体を酷使していたと思うんです。チアは好きでやっていることではありますが、ストレスやプレッシャーはかかっていましたし、責任感から睡眠時間を削って捧げていたところもありました。当時はそうしていることで自分がすごく頑張っていると充実感があったからです。

 

ただ、病気になった今は、もっと自分を大切にしなければいけなかったなと反省しています。無理をせずに休むとか、そういう決断も必要だったんじゃないかって。30~40代って仕事と家庭を両立されている方が多いと思うんですが、ついつい自分のことはあと回しになってしまいがちですよね。だからこそ自分を大切にしてあげる時間が必要だと思うし、難しいかもしれないけれどうまく時間を捻出して自分を休ませてあげてほしいですね。

 

あとはこれは変化というか今まで以上に感じるようになったことですが、人への感謝の気持ちです。こんなにも多くの人が応援してくれ、そして支えてくれたことに驚きました。今までももちろん感謝の気持ちはありましたが、今まで以上に強く感じるようになったというか。今後は私にできることでみなさんへ恩返ししていきたいです。

 

── 常にポジティブに前に進んできたという印象が強い本田さんだからこそ、今後どんなことにチャレンジしても実現できそうな気がします。

 

本田さん:まさか自分が40歳で乳がんになるなんて予想もしてなかったし、「なんでがんになってしまったんだろう」と今だに考え、悲しくなることはあります。日本にいるころから食事には人一倍気をつけていたのに…。人生はいつ何が起こるかわからないことを悟りました。もしかしたら明日死ぬかもしれない。後悔しない選択と時間を過ごすことは何よりも大事なことだとあらためて痛感しているところです。

 

私は自分がやりたいことを貫いた結果、結婚せず42歳を迎えました。実際、チアと家庭の両立は現実的ではありませんでした。結婚はしていませんが、それは自分が選んだことで後悔してはいないし、その選択をしたからこそ夢を叶えられたとも思っています。価値観、考え方は人それぞれですが、どんな立場でも後悔しない選択と、その瞬間を全力で生きることはすごく大切なことですよね。

 

── さまざまな経験を経て伝えたいことがあるとしたら、それはどんなことでしょうか。

 

本田さん:がん予防に関しては定期的に検診を受けてほしいですね。忙しいことを理由にしたり、少し調子が悪くても「大丈夫でしょう」と病院に行かない人がいると思うんです。でも早期発見がすごく大事で助かる可能性が高いからこそ早めの対処を心掛けてほしいです。

 

私が好きな言葉に「意志あるところに道は開ける」という言葉があります。この言葉を信じてこれまで夢や目標を一つひとつ達成してきました。決して平坦な道のりではありませんでしたが、諦めず強い気持ちで努力し続ければ、必ず結果はついてくると実感しています。人生は一度きりなので後悔しないように。でも、頑張りすぎないように。

 

取材・文/石井宏美 写真提供/本田景子