考えることをやめた時点で選手の成長はないから

── 相澤さんの人生はまさに陸上とともにあったんですね。陸上競技以外はまったく興味はなかったんですか。

 

相澤さん:実は子どものころから野球を見ることも好きでした。通っていた中学校に陸上部がなかったこともあって野球部に入っていたんです。

 

── 野球と陸上の二刀流ですね。

 

相澤さん:二刀流と呼べるようなレベルではないですけどね(笑)。今もメジャーリーグが好きでよく見ています。今年、同じ東北出身の佐々木朗希選手がロサンゼルス・ドジャースと契約しましたが、メジャーに行きを決断したのは、怪我をいつするかわからないからトライできるときに挑戦したいというような話をされていたんです。

 

僕は1万メートルを中心にこれまでトラック競技をメインにしてきましたが、これからはマラソンに力を入れようと考えています。28年のロサンゼルスオリンピック出場を目指すうえで多少のリスクはあっても最短のルートで目指すことが重要だと考えているのですが、佐々木選手の時間を無駄にしない、今できる最善の選択をするという考え、それに伴った決断にすごく共感できることがあって。

 

所属する旭化成は昨年11月に行われた九州実業団毎日駅伝大会で3年ぶりに優勝。相澤さんはアンカーを務め、トップでゴールテープを切った

── ほかのアスリートの活躍や考え方、マインドなどは刺激になることも多いんですね。

 

相澤さん:たとえば大谷翔平選手はこれまで誰もやってこなかったことに挑戦して成功していますよね。あのレベルに到達するのは難しいかもしれませんが、僕も長距離界ではあまりチャレンジしてこなかったトレーニングにトライして、マラソンで成功したいという思いが強いです。世界で勝負するためにも、これまでの常識にとらわれず、あらたな挑戦をして道を切り拓いていきたいです。

 

── 相澤さんは他方面にアンテナを張って、積極的にご自身の競技にも生かしているんですね。

 

相澤さん:陸上だけだと知りうる限られた範囲内でしか物事が起きないし、新しい考えや視点が見つけにくいんです。でもアスリートに限らず、たとえば研究者など他業種に従事している方の話を聞くと、まだまだ自分にやれることはあるんだなと可能性を感じることができる。考えることをやめてしまったら選手としての成長が終わってしまう。自分をアップグレードできるという意味では常にアンテナを張って、いろいろな人の言葉に耳を傾けたり学ぶことはすごく有益なことだと考えていますね。