子育てを通して見える世界
── 子育てを通じてご自身で変わったと思うことはなんですか。
りんたろー。さん:子どもが生まれたときに自分の親に対する深い感謝の気持ちが生まれました。こんな大変な思いをしてぼくを産んで育ててくれていたのかということと、これまでぼくはこんなことも知らずに38年も生きてきたということ。それに、子どもがいるとこんなにも見える景色が変わることにも驚いています。
たとえば駅にエレベーターが1か所しかなくて、優先される方がいるときにも大勢の方でパンパンになっていること。目と耳からだけでは感じ取れない情報もあるので一概には言えないとは思いますが、本当にエレベーターが必要そうに見える方々が、3回も4回も、エレベーターを見送っているような状況を目の当たりにしました。たしかに、これまでの自分の生活を振り返ってみても、何も考えずにエレベーターを使っていたことがあったなって。子どもがいなかったら感じ取れなかったことで、最近は階段を使うようになりました。
── 周りの方に助けられることもありますか。
りんたろー。さん:人の優しさを感じることが増えました。ベビーカーで子どもを連れているときにドアが閉まらないようにしてくださる方とか、飛行機で子どもが泣いてしまったときに「赤ちゃんは泣くのが仕事だから」と声をかけてくださる方も。元から優しい方なのか、子育ての経験があるからかは分かりませんが、人のあたたかさも感じますね。
その一方で、舌打ちされることもありますし、本当にいろんな人がいるんだなって。ベビーカーが邪魔だから公共の場でうろうろするなと言われるのを聞くと、子どもを抱っこしながらベビーカーを畳む大変さをこの方はわかってるのかな、と思うことも。そういうぼくも、子どもが生まれる前はまったく知らなかったですし、現状の把握すらしてなかったことに気がつきました。体験しないとわからないことってたくさんあるので、さまざまな意見の方が共存していくにはどうしたらいいのか考えています。
── 価値観や生き方も多様化していますし、すべての人の意見を尊重するのは難しいですね。
りんたろー。さん:ぼくが気がつけなかったように、各々の常識が違いすぎて、みんなそれぞれ、どういう思いをしているかが届きにくいと思っているんです。その立場の人が思う大変さや息苦しさというものを伝えていけたらいいのかなと思っています。経験がない方やもう忘れてしまった人にもわかるように発信していきたいです。
子育てがスタートして、人生がもう一周始まった感じがしています。でもお父さんとしてはまだ1年生なので、新鮮に感じることをそのまま伝えられたらいいですね。仕事の内容も含めていろいろな変化があるのですが、この変化を楽しんでいきたいです。
PROFILE りんたろー。さん
1986年生まれ、静岡県出身。2017年に兼近大樹さんとお笑いコンビEXITを結成。プライベートでは2022年8月にタレントの本郷杏奈さんと結婚し昨年11月に第1子が誕生。
取材・文/内橋明日香 写真提供/りんたろー。