風邪をひくと周りに迷惑が
── 寮生活を送っていたとのことですが、体調管理などはどうしていたんですか。
AKINAさん:ずっと体には気をつけるよう言われていました。でもやっぱり子どもなので前後のスケジュールを見ながら健康管理ができないんです。全力で毎日を過ごしていたので、「今日が楽しかったらいい」という気持ちでした。それで、次の日に声が出ないなんてこともあって。
風邪をひいてしまったら周りの大人たちから「うわ〜」と言われることも多かったですね。今となったらそれもわかるのですが、当時はまだ子どもなので、体がつらくて優しい言葉をかけてほしいときに追い打ちをかけられているような気持ちでした。
今なら、自分が風邪気味だとしたら周りから離れたり、「近づかない方がいいよ!」と気づかうこともできるのですが、当時は、自分が風邪をひくと急に周りの大人がマスクをしだしたり、がっかりしたりする姿を見るのがショックでした。
自分のせいで、あらゆるところに迷惑がかかるということも目の当たりにして。大人が関係各所に謝っている姿を見ていると、申し訳ない気持ちになっていました。そこから今に繋がるのですが、仕事のうえでは体調管理を何よりも気をつけるようにしています。
ライブは特に、すでにチケットも売って会場もおさえていますし、何より楽しみに待ってくださっている人がいます。代役がない仕事なので、日頃の免疫アップと家族全員の体調は常に「頼むよ」と祈ってますね。
── いわゆる青春時代を仕事で駆け抜けてきたかと思いますが、振り返ってみていかがですか。
AKINAさん:今思えばですが、当時、放課後に友達と遊ぶとか、いわゆるみなさんが普通にしてきたことをしないまま大人になってしまったなって。それこそ制服デートもしたことがありません。同世代の人と話して、「あの頃、楽しかったよね」という話題になると、「私にはその時代がすっぽりないな」と思うことがあります。
歌手になる夢が叶って、芸能界での経験を積めたのはもちろんよかったのですが、思春期らしい思春期を通ってきていないので、実はいまだに男性と話す際に「どうしよう」と思うことがあるんですよ(笑)。女子寮でしたし、Folder5では女性だけのグループになったので。
基本的に仕事では年上の男性と接する機会が多かったのですが、年齢を重ねていくうちに、同世代や自分より若い方とご一緒する機会が増えてきて。「これはどうコミュニケーションをとったらいいんだ」と思ってしまいます。
── 娘さんは現在9歳とのことですね。どのような10代を歩んで欲しいと思いますか。
AKINAさん:普通に生活してほしい、というとありきたりかもしれませんが、何か特別なことをしなくても、普段の友達との会話とか、この時期ならではの楽しみを味わって成長してほしいなと思いますね。
AKINAさん
1985年生まれ、沖縄県出身。12歳でFolderとしてデビューし、その後Folder5のメインボーカルとなる。現在は俳優や歌手としてソロでアーティスト活動を行う。プライベートではお笑いタレントのビビる大木と結婚、1児の母。この夏は、「Peechic Parchic Music」秋田公演、東京公演とデビュー27周年ライブにて、歌とともにサックスの演奏も行う。
取材・文/内橋明日香 写真提供/AKINA