今月からカレーハウスCoCo壱番屋、「ココイチ」をFC展開する会社の新社長に22歳で就任した諸沢莉乃さん。社内から疑問の声が上がらなかったのは「意思あるものにチャンスを」という社風でした。

現場に立ちながら経営の勉強も

── アルバイトからスタートして、今月から「ココイチ」をフランチャイズ展開する(株)スカイスクレイパーの社長に就任されました。仕事の面での変化について教えてください。

 

諸沢さん:4月末まで現場でアルバイトとして働き、今月1日から社長に就任したのですが、実は仕事内容で変わったことはありません。20歳の頃に社長にならないかと打診を受けて、そこから2年間、準備を徐々に進めてきたので、今も変わらず現場に立ちながら、経営の勉強もしています。

 

諸沢莉乃さん
22歳で社長に就任した諸沢莉乃さん

前の社長だった西牧会長も3年間は一緒に並走してくださるので、そこで引き継ぎをしていく形です。今は取材の依頼が多いので、会長も私に気をつかって新しい仕事内容を一気に教えないようにしてくれていると思います。

 

── 取材依頼が多いのは、やはり22歳で社長に就任したということの珍しさですよね。

 

諸沢さん:私がたまたま若いので、若い方にフォーカスした会社で注目されているイメージがある方も多いのかもしれませんが、社内には2年前に60歳で入社した方もいます。学校の先生で、最後は校長先生まで勤められた方なのですが、ずっと飲食店の店長になるのが夢だったけれど、就職の際に親に反対されたそうです。定年退職後に、次は自分がしてみたかったことをしたいと入社してくれまして、現在は店長を目指しています。

 

若い方ですと、高校3年生で店長をしている方もいます。年齢や性別、キャリアにとらわれず、意思あるものにチャンスをということを大切にしていますので、挑戦してみたいという意思がある方は大歓迎です。ですので、社内では私が社長になっても「なんで諸沢が?」という雰囲気はまったくありません。

 

── 2年前から社長になるための準備を始め、現在も勉強を続けているそうですが、具体的には社長業として、どんなことをしているんですか。

 

諸沢さん:幹部を集めて、社外のコーチも入れた会議を月に1回、それと週に1回、社内のミーティングがあります。今年はどのくらい利益を出すのを目標にしようか、ということを話し合う会議です。

 

諸沢莉乃さん
「初々しい!」ココイチでアルバイトを始めた15歳の頃の諸沢さん

この3年間で、今年は現在の会長が社長のときにしていた仕事の50%を覚える、来年は75%、というふうに業務内容を増やしていく予定です。何月までにこれをできるようになるというふうに具体的な内容をリストアップしているのですが、すべての仕事を私が担うのではなく、この担当は課長で、これは部長で、というふうに割り振りをしながら決めている段階です。

 

── いわゆるワンマンではなく、全員の力を合わせるんですね。

 

諸沢さん:社長の打診を受けてからの2年間は、私の周りの方も一緒に育っていく期間でもありました。経験がない私は、前社長が担っていたことすべてをできるわけではないので、スタッフそれぞれの強みを活かして、数字に強い人はより深く学んで、クレーム対応はこの方、採用はこの方というふうに割り振りしています。私もひとりじゃないと思えますし、何より仕事をするうえで安心感があります。トップダウンではなく、みんなで成長しているという実感もありますね。

 

── 経営について学び始めてみていかがでしたか。

 

諸沢さん:これまで現場のことしか知らなかったので、まず会議で出る言葉が難しかったです。何も分からなかったので、単語を調べることから始めました。それに、私が途中でわからないことを質問するので、会議を止めてしまうのが申し訳ないなとも思っていました。現金収支に、粗利(売上総利益)。漢字でどう書くかもわからない言葉がたくさん出てきて最初は戸惑いました。

 

諸沢莉乃さん
カレーハウスCoCo壱番屋のほか、ラーメン店もFC展開するスカイスクレイパー。現場でラーメンを作る諸沢さん

── わからないことはその場で聞くんですね。

 

諸沢さん:会議中も、資料を持って「ここ、教えてください」と聞きに行っていました。わからないままことをそのままにしておくのが苦手なんです。

 

── 素敵なことですね。昔からそういうタイプだったんですか。

 

諸沢さん:そこまで熱心に学校の勉強をしてきたわけではないのですが、成績表の「関心・意欲」のところだけはずっとよかったと思います。