15歳で始めたアルバイト「社風と両親のしつけが合致して」

── ココイチでのアルバイトを始めるきっかけを教えてください。

 

諸沢さん:高校1年生になって周りの子がアルバイトを始めたので、私も何かしてみたいなと本当に軽い気持ちで始めました。たまたま自宅のポストにココイチの求人チラシが入っていたのですが、「テスト期間は休んでOK、友達と一緒に働ける」など、私にとって魅力的な条件ばかり書いてあったので、友達を誘って一緒に面接に行ったのが始まりです。

 

── 高校生の年齢ですと、同じ飲食店でもいわゆる映えるカフェなども人気ですが、なぜカレー店だったんでしょう。

 

諸沢さん:どこで働くかはまったく気にしていなかったんです。それに、まさかここまで長く続くとも思っていなかったので、「とりあえずやってみよう」という気持ちでした。それがこんなにどっぷりハマってしまいました。

 

── アルバイトの仕事は、どんなことから始めるのですか。

 

諸沢さん:フロアでの接客からです。お冷出しから、カレーのご提供、サイドのサラダを作るところから始まります。その後、徐々に厨房に入って、カレーを作ります。高校生のうちにすべてのポジションができるようになりました。

 

── 会社のどんなところがご自身に合っていたと思いますか。

 

諸沢さん:これは前社長の西牧会長がよく言うことなのですが、ココイチの仕事内容はここでしか使わないけれど、人間としての人生はこれから何十年も続いていく。だったら、人として大切なことを身につけてからここを卒業してほしい、と。挨拶や礼儀、時間を守ることや人とのコミュニケーションのことですね。

 

諸沢莉乃さん
前社長の西牧会長(写真左)と諸沢新社長

これが実は、私が小さい頃から両親に言われてきたこととまったく同じだったんです。勉強しなさいとはいっさい言われなかったのですが、挨拶や時間については厳しくしつけられました。門限の時間も友達よりずっと早かったです。当時はそれが嫌だったのですが、今となってはありがたいことだったと感じています。

 

会社が大切にしていることと、これまで育ってきた環境が合致して、信用できたことが長く続けられた大きな理由ですね。それに、人をみてくれる会社だということも感じていました。仕事中にうまくできないことがあったり、自分が思ったより仕事のスピードが遅かったりしたことに悔し涙を流すことがあっても、「頑張った失敗は、どんまいだよ」と周りがフォローしてくれていました。

 

だんだんと一緒に働く人たちの力になりたいという思いが生まれてきたのは、環境に恵まれていたからだと思います。

ココイチで気がついた「本当にしたかったこと」

── 高校卒業後は、ココイチでのアルバイトを続けながらボランティア活動もしていたそうですね。

 

諸沢さん:昔から、将来は何か人のためになりたいと思っていたので、海外向けの募金活動などのボランティアをしていました。でも集めたお金を直接届けられるわけではないので、自分が想像していた「人のために働く」というビジョンとちょっとズレがあるなと感じていました。その頃、たまたま店舗を訪れた当時の西牧社長が、「最近どう?」と声をかけてくれて、そのことを相談したんです。

 

諸沢莉乃さん
「人のために汗をかき続けたい」と話す諸沢さん

「遠くの人を助けるのも素敵なことだけど、もっと身近な人のためになれることもあるんじゃないかな」とアドバイスしてくださって。自分がしたいことを見つけるために、会社を有効活用してくれていいよと。そこから1つの店舗に限らず、いろんな店舗を回って学生をメインに人材育成などにも携わっていきました。

 

そこで目の前の人が幸せになっていく変化の過程を見ていたら、「私はこういうことがしたかったんだ」ということに気がつけたんです。

 

── 今年の新入社員へのご褒美に、前社長だったら焼肉を提案しようと思うところを、諸沢さんは「まつげパーマ」をプレゼントしたと伺いました。

 

諸沢さん:新入社員の女の子2人がすごく頑張っていたので、研修を卒業して接客3級をとったら何をご褒美にしようかずっと考えていたんです。2人ともすごくおしゃれに興味があって、「まつげパーマしたことある?」という他愛無い話をした時に、「いつかしてみたいです!」と言っていたのを思い出しました。

 

「研修を卒業したら、まつげパーマに行こう」と提案したら「いいんですか!頑張ります!」と。サロンには一緒に行ったのですが、鏡を見て飛び跳ねて喜んでいた姿を見て、私もとても嬉しかったです。

 

── このアイディアは同世代ならではですね。

 

諸沢さん:年齢も近いですし、私もその頃はメイクにすごく興味があったので。接客2級をとれたら、次は下まつ毛のパーマがいいですと言われています(笑)。

 

── 上下のまつげがぱっちりで、笑顔で接客できそうですね(笑)。諸沢さんは、社内に壁がないのが強みだと伺っていますが、これからどんな社長の姿を目指していきたいですか。

 

諸沢さん:高校生の頃からいろんな店舗を回っていたこともあって、パートの方や社員の方もよく知っています。皆さんからよくしていただいたので、これからも現場に入り続けて、いい意味で距離が近い社長でありたいと思っています。27店舗全員の社員とスタッフと一緒に働くことが最近できた目標です。

 

経営も学びながら、一緒に現場に入って、仲間に寄り添える社長であり続けたいと思っています。上の人から何かを言われると指摘になってしまうことも、一緒に現場にいる人からであればアドバイスや提案になります。お客様のためにも、従業員のためにも汗をかき続けられる人でありたいと思っています。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/(株)スカイスクレイパー