ドラマ「GTO」の出演など俳優や歌手として活動した希良梨さんは、二十歳頃から拠点を海外に移し日本を行き来する生活を送っています。日本を離れた理由について伺いました。(全3回中の2回)

日本を離れて海外へ

── ドラマやCMの出演、歌手活動などで多忙な日々を送るなか、突然二十歳前に日本の芸能活動をストップしますね。

 

希良梨さん:小さい頃からずっと働いてきていて、忙しく過ごさせてもらっていたのもあって、いっぱいいっぱいになっていました。生理痛がひどいので、産婦人科で検査をしたら子宮頸がんが発覚して。病気にもなってしまい、挫折したような気持ちでした。幸い、早期発見で、手術も成功したあとで日本を飛び出したんです。これを機に新しい世界に触れてみたいと思いました。

 

希良梨さん
台湾でファッションイベントに参加した際にビビットなドレスを着こなす希良梨さん

── なぜ海外へ行こうと思ったのですか。

 

希良梨さん:日本でアーティスト活動をしていた時に、NYのメイクアップアーティストの方に担当してもらっていたんです。彼女の生き方に憧れて海外に行ってみたいという思いが強まっていました。知人がサイパンで撮影のコーディネート会社をしていたこともあって、そこで働くためにサイパンに行きました。

 

当時は日本でもサイパンがブームで、日本からCMやMVの撮影の方がたくさん来ていたんです。今はなくなってしまったのですが、ホテルにスタジオがあって、黒澤明監督が使用していた機材を使用していました。私は、イメージキャラクターなどの仕事もしながら、撮影の裏方の仕事もしました。初めて撮影を支える仕事を経験したのですが、すごく楽しかったですね。英語も話せなかったのですが、皆さんにあたたかく迎えてもらって、今でも当時、出会った方とは繋がりがあります。海外で働く楽しさをここで教えてもらいました。

 

希良梨さん
台湾のエンターテイメントの世界で活動をしていた頃の希良梨さん

── その後はどうされるんですか。

 

希良梨さん:他の場所も見てみたいと思って、アメリカ、オーストラリア、タイなどにも行きました。語学学校に通って基本のあいうえおを学んでから、そのあとは独学で勉強します。日本で育った台湾人の親友がいるのですが、その子が台湾で芸能の仕事をしているので、タイで生活しているときに「一緒に仕事しよう」と誘ってくれたんです。タイから台湾に飛んで、親友と仕事をしていました。

 

結婚して出産するまで台湾のエンターティンメントの世界で仕事をするのですが、何もかもが新鮮でした。日本や台湾の企業の広告の仕事などをさせてもらっていましたが、現場もすごいフランクで。普通に知らない人が入ってきても誰も気にしない(笑)。日本だったらきちんと管理されていて、不審者扱いされて大騒ぎになってしまうようなことに対してもおおらかなんです。

 

台湾では結婚相手とも出会うのでご縁があったんだと思います。台湾では、台湾の文化にどっぷり浸かりました。ネイティブの方に比べたらもちろん劣りますが、物事を中国語で考えられるようになり、語学を学ぶことが楽しいと思えるきっかけになりました。

海外で変わった価値観

── 台湾で息子さんを出産されたと伺いました。

 

希良梨さん:実は妊娠発覚と同時に子宮頸がんが再発していることがわかって。先生からも子宮をとった方がいいと言われたことがあったんですが、決断できなくて。今後、もし悪化するようなことがあれば子宮を摘出しようと思っています。

 

希良梨さん
現在、生活しているメキシコの「死者の日」に友人とフェイスペイントをした希良梨さん(写真左)

子どもが逆子だったので帝王切開で出産したのですが、そもそも台湾では帝王切開の方が多いそうです。風水や占いで出産の日にちや時間を決める方が多いのですが、私はもうおしるしが来ていたので、「日付は指定できないから、時間を指定して」と言われて出産したのは面白かったです。

 

台湾では共働きの家庭も多いのですが、家のことをする大変さも仕事をする大変さもどちらも経験してきました。でも海外で生活していて思うのは、日本の女性と海外の女性の生き方が違うということです。

 

文化も違えば考え方も違うのは当然なのですが、もっと日本の女性は自信を持っていいと思います。私自身も日本で生きづらさを感じて海外に出たので気持ちはわかるのですが、控えめということは日本では当たり前ですけど、できることを自慢しない奥ゆかしさも魅力のひとつですよね。日本ではいいこととして扱われていないのが残念だなと思います。

 

── 希良梨さんが海外生活で変わったと思うことはありますか。

 

希良梨さん:みなさんそれぞれの人生でいろんな時期があると思うのですが、「絶対にこうでなきゃいけない」というのはないと思っています。もちろん私も日本で育った日本人ですが、自分の生き方は、自分自身が決めていいと思っています。時が経てばそれがいずれ個性になっていきます。若い頃は苦労を買ってでもしろと、私もそういう時代の人間なのでそう言ってしまいますが、本当にそうだと思います。

 

あのとき日本を飛び出して、新しい価値観や考え方に触れていって、いいことも悪いこともすべて身になっているので経験は宝だなと思います。自分のためになることがわかっているから、のちのち苦労や困難や逆境があったとしても前向きに乗り越えられるようになりました。つらいと思うことはあっても、乗り越えた先に必ず成長と大きな幸せがやってくるんです。リスクも責任も伴うのですが、悩んでいる方も一歩踏みだす勇気を持ってほしいと思います。

 

うまくいかないとき、どうしても他人や何かのせいにしてしまいがちですが、戦う相手は常に他の誰かじゃなく自分なんです。自分と向き合わない限り成長はないと思っています。人生いろいろあると思いますが、すべて自分の成長に繋がるエネルギーに変えていくのがいいと思えるようになりました。

 

PROFILE 希良梨さん

1980年東京都生まれ沖縄育ち。子役として芸能活動をスタートさせ、ドラマや映画、バラエティ番組に出演。Kirariとしてアーティスト活動も行う。二十歳頃から拠点を海外に移し、台湾のエンターテイメントの世界でも活躍。独自の感性で今年のはじめよりメキシコにて生活を送る。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/希良梨