バラエティ番組のアンケートに書くことがない
── どういう面で難しいなと思われたのですか?
山田さん:ネタを考えるとかもそうなんですが、テレビ番組では「事前アンケート」というのがあって「芸能界の友達は誰ですか?」とか聞かれるんですけど、おらへんから。
ただでさえ腕がないのに、その手のエピソード、武器も全くない状態では、自分には難しいなと思ったわけです。
みんな暴露話とか好きでしょ?俺は誰の秘密も、プライベートも知らない。
もちろんそれがすべてじゃないですけどね。単純にお笑いの返しとか、フリートークの技術とかいろいろあるとは思いますけど、そういう能力もたりないと思う。
だから、1個1個の仕事で結果を出そうと思ったら、そんなにたくさんの仕事をするのは厳しいなと今は思ってます。
「ひとりの現場のほうが気楽だと分かった」
── 担当されているラジオ番組が15周年を迎えたり、エッセイも数多く出版されたりとご活躍です。今ご自身に合った働き方を見つけた、と感じていますか?
山田さん:そうですね。そう思って振り返ると、最近の仕事って、自分のラジオのレギュラーが3つぐらいあって、たまにナレーションとか声の仕事があって。ひとりでブースに入る仕事ばっかりなんです。
エッセイ書いたりという、物書きの真似事みたいなこともひとりだし。コメンテーターの仕事もいただきますけど、基本自分の意見を言うだけなので。フリ落ちの絡みがあるわけでもない。
自分はひとりとか少人数のときに、ようやく力を発揮できるタイプの人間なんだとわかりました。
今はコロナでなくなりましたが、昔は芸人が100人ぐらいおるんちゃうかという雛壇とかもありましたからね。そこでバーっと前に出たり、爪跡を残そうとすると「この前、こいつと一緒に旅行行ったんですけど~」とかいう話になるわけですよ。
俺には、それがないんですよ。そこには入れないな、と。
── エピソードトークが求められるバラエティ番組は多いですよね。
山田さん:だからといって、そういう番組がおもしろくないと思っているわけではないんですが、俺には無理やな、と。
だから、引きこもりの件も含めて、人生失敗したな、と思っています。お笑いで一発当ててワーッと忙しいときに、もうちょっと頑張って社交をやれば良かったなとか、後悔はいっぱいありますね。
ただ、人生ってそんなもんだから、別にええという感じですね。
── 「人生失敗した」という認識は、お子さんが生まれたことで何か変わりましたか?
山田さん:娘を2人授かれたというのは、もちろん良かったことだと思っています。
ただ、人生がずっと「やっぱりあかんかったか」ということが多かったから。芸人として一発当てる前、「エンタの神様」に出られたときも「これで売れるんや」と期待したら、3回で終わってもうて。
そのあと同じ事務所の小島よしおがギューンと売れて。「やっぱり、俺たちなんてダメか…」とがっかりすることが多かったんで。
子どもも、僕は男3人兄弟だったので、娘が欲しいなと思ってたんですけど、「俺が娘が欲しいと思ったってことは、そうはならへんのやろな」と、思ってたぐらいなんです。
読者の人はこの話はひくと思うんですけど、子どもも「たぶんすぐに死ぬやろな」と思ってたんです。
なかば諦めの気持ちで育てていた時期があったので。そういう意味では今、長女は今小4で、しかも平気で嘘をつくふてぶてしい子どもに育ったので、なかなか上出来やと思ってます(笑)。