貴族の衣装で「ルネッサーンス」のギャグで一世を風靡した、お笑いコンビ「髭男爵」の山田ルイ53世さん。現在はラジオ番組のМCや新聞連載といった文筆活動など、幅広く活動を続けています。「自分に芸能界は向いていない」と言いきる山田さんがたどり着いた、“ちょうどいい働き方”とは。(全5回の5回目)
芸能人の友人はゼロ、「オールスター感謝祭」の休憩時間がしんどかった
── 今「もう一度ブレイク当時のように売れたい」というお気持ちはありますか?
山田さん:収入が増えるのはやぶさかでないと思いますね。
ただ、いちばん忙しかったのは2008〜2009年あたりなんですが、当時「ちょっと俺向いてないな」と思っていたんです。基本的にまず、社交がゼロなんですね。人づき合いに非常に疎いわけですよ。
でも芸能界って、ある程度社交できないとしんどい部分も正直あるように思う。「オールスター感謝祭」とか何回か出させてもらったことありますが、あの休憩時間がめちゃめちゃ嫌なんですよ。
── いろいろな屋台が出る、立食パーティーのような時間ですね。
山田さん:そうです。だいたいの人が、芸能人の友達がいるんですよ。
「なんでその役者さんとそんなに仲良くしゃべってんの?」みたいな。僕は誰も知り合いがいない。もちろん挨拶ぐらいはしたことあるんですけど、仲良く話し込むような相手もおらんし。
そもそもそういうつき合いが、しんどいと思うほうで。だから、あの時間が、ほんまに肩身が狭かったです。
── 当時、休憩時間はどちらにいらっしゃったんですか?
山田さん:なんとなく過ごしていました。隅っこのほうで、料理をひとつだけ取って、それをずっと食べてるフリをして。
だから、本番のクイズよりも休憩時間のほうが憂鬱で。正直オファーが来ても「行きたくないな」と思ってたぐらい。そういう意味でも「芸能界向いてないな」と、我ながら思います。
こんなに向いてないのに10年以上ある程度飯が食えてる、逆に俺すごいやんって思ってます。
あとは、単純に自分の能力がないんですよね。めちゃめちゃ忙しいときって、1日に2個も3個も収録があったんです。ロケ番組の合間も収録が入ったりして休みがなかったんですが、そういう時期は、自分のキャパシティを超えていたなって思います。
たとえば、テレビに出て、ある程度ちゃんと仕事としてこなすには、自分の能力では1日1番組、それも週に3回ぐらいじゃないと無理やなと思ったんです。