「運命の相手」とは程遠い、相方・ひぐち君との出会い
── いろいろ試した結果残ったのが、現在のお仕事だった、と。
山田さん:そうですね。
そもそも貴族キャラになったのも、「普通の漫才では勝たれへんな」という、諦めがあったからで。
僕はもともと、大学時代にほとんど失踪というか、夜逃げ同然で上京して、NSCに入ったんです。そして、けっこういろいろな人と、コンビを組んでは別れ、みたいなことを繰り返したんです。
(相方の)ひぐち君は、NSCで1回組んだことがある、市井という男の大学時代の友達なんですけど、最初市井と3人でトリオを組もうということだったんです。でも、市井が辞めて、ひぐち君とふたりになったんですよ。僕はあんまりよく知らない、2つ年上の人とコンビを組まなあかん、ということになって。
最初は、ひぐち君がネタを書いてきたりとかしたんです。でも、そのネタが正直僕には面白くなかった。そもそもお笑いをあんまりわかってない、というか。今でもそれはそんなに変わらないですけど(笑)。
ただ、そこまで解散を繰り返してたから「とりあえず長く組もう」と。
── それまでは、どういった理由で解散していたんですか?
山田さん:「もうちょっとシュッとしたルックスの奴のほうがええな」とか「こいつ、ツッコミ弱いな」とか。ひぐち君にも、相方としては全然満足いってなかったです。
「運命の相手と出会ったぜ。こいつとなら天下が取れる」なんて言うにはほど遠い。ただ、間を取り持っていた市井がやめてしまって、取り残されてしまった。
そのまま続けるかどうか迷ったんですけど「今まで簡単に解散しすぎてたのかな。とりあえず長く組むことも良いことなんじゃないかな」という気持ちになっていたときだったから、ずっと続けてきたんです。それも、“諦め”ですよね。
ひぐち君は「もっとおもしろいネタが書ける奴のほうがええ」「ツッコミがうまい奴のほうがええ」という、どの条件にも当てはまってなかったのに。ただ「続ける」という気持ちだけだったんです。
── そうだったんですね。
山田さん:ひぐち君も頑固だったから、最初は「俺が書いたネタやないと嫌や」「漫才はやりたくない、コントや」「俺がツッコミや。ボケは絶対にやらん」とかいろいろ言ってたんです。
で、全部1回試させて「な?あかんかったやろ?」という。ダメだった実績を積み重ねて、「じゃあ、そろそろ全部俺の思う通りにしてええかな?」ということで、ようやくスタートしたので。あの期間がなかったらもうちょっと早く飯食えるようになっているはずですね(笑)。
でも当時は、「組み続けるということが大事だ」って思っていたから、腹くくって我慢してましたね。