5億3000万円。途方もない募金額がわずか1か月で集まったニュースはメディアで大きく報じられました。重い心臓病を患ったあおちゃんを救うため、両親が心から頼った主要な8人からなる「あおちゃんを救う会」。会はどういう経緯で、どんな人が集まったのか、代表の國近京輔さんに聞きました。
募金をするには「組織を立ち上げる」必要があった
「『会って話したいことがある』。そう連絡を受けたのが昨年6月中旬のことでした」と話すのは、「あおちゃんを救う会」の代表を務める國近京輔さん。
2021年10月に生まれた佐藤葵ちゃんが重い心臓病を患い、アメリカで心臓移植を受けるための募金活動をするニュースを目にした方も多いと思います。
募金の目標金額5億3000万円を集めるための第一歩が「あおちゃんを救う会」の発足でした。
「あおちゃんのお父さん・昭一郎さんとは会社の同僚でした。私は建築部門のマネジメント職で彼はIT系の部署にいて、現場業務改善ツールの開発で同じチームになったのが、知り合ったきっかけです。
明るくて仕事もしやすくて個人的にリスペクトできる人間です。彼が会社を辞めた後も、つながりをつくっておきたくて週末に会ったり、彼に仕事を依頼したこともあります」
あるとき、昭一郎さんの次女・あおちゃんが、生後まもなく心臓の重い病気を患っていることを聞く機会がありました。ただ、そのとき、國近さんは何をしていいかわからず、自分ごとにしづらかったといいます。
「具体的なことは聞けなかったし、何かを相談されたこともなかった。でも、ずっと気にはなっていて、昨年6月中旬に“会って話したいことがある”と言われました」
國近さん夫婦はあおちゃん家族とのランチの場に出向き、あおちゃんの現状や命を紡ぐために移植手術する決断をしたこと、国内では小児ドナーが少なく待機時間が長引くこと、海外での移植には莫大なお金が必要なことを知らされます。
「自分たちだけの力でお金を集めるのは難しい。募金が必要になってくる。そのためには“救う会”(団体)を立ち上げて、NPOなどに支援してもらう必要があることをそのとき初めて知りました」
一定数のメンバーをそろえて規約を作り、あおちゃんを救うためのサポートをする組織にすることで、NPOなどの組織が活動をバックアップするのが通例だそうです。
「ご夫婦はそれぞれ素晴らしい人柄で、広い人脈もある。昭一郎さんは大学でアメフトをしていたので、そのつながりは自分には比べものにならないくらい、濃密な時間を過ごしてきた仲間もあるはず。
だから、僕にはメンバーのひとりとして声がかかったのだろうと思っていました。でも、聞けば相談したのは私が初めてだ、と」
その理由に対して、昭一郎さんは「真っ先に声をかけたのは、國近さんがとても信頼できて兄のような存在だったから」と、コメントを寄せてくれました。