現在、作家として小説の執筆を行う大木亜希子さん。中学で芸能界デビューし、その後25歳で会社員に転身するも“人生に詰んで”、「金なし、職なし、彼氏なし」の状態になったといいます。「人生のどん底を味わった」と話す大木さんに、そこからどう立ち上がっていったのか、伺いました。

段ボール解体のアルバイト中に人生が変わった

── 会社を辞めて「人生に詰んだ」と思いながらも、書くことは続けていたそうですね。

 

大木さん:
恋愛も失敗し、婚活も頑張ったけど結婚もできない。仕事も辞めて一文なし。という内容のエッセイを書いたら、いきなり大ヒットしてTwitterのトレンドランキングの上位に入りました。

 

その日は段ボールを解体するアルバイトをしていたのですが、勤務中、バイト先の同僚が「亜希子の記事がトレンド入りしてるんだけど!」と教えてくれて。「え?そんなことより、今は電話番の方が大事だから」と答えたくらい、まったく予想していませんでした。

 

アイドル時代より体重が20キロ増えていたという人生に詰んでいた頃の大木さん

その日のうちに、大手メディア10社以上の取材依頼が来ました。ここまで赤裸々に自らの苦悩をさらけ出す女性が、珍しかったのかもしれません。

 

これまで隠し通してきた自分のみっともなさや、女性の生きにくさを書いた瞬間に「共感しました!」というメッセージの嵐。そこから「本を書きませんか」と言われたんです。一夜にして人生が変わりました。

 

その翌週には実際に出版が決まって。まったく執筆経験のない、無名のライターだった私が同じ時期に2冊も本を出せることになったんです。ものすごく衝撃的な出来事でした。

 

── ジェットコースターのように目まぐるしい日々だったかと思いますが、当時はどんな気持ちでしたか。

 

大木さん:
捨て身になったら、今まで積み重ねてきた「他人からこう見られたい」ということが何もなくなって。あまりにも一転して、喜びよりも不思議さを感じていました。

 

女優時代は、ドラマで何番手の役を貰わなきゃと常に考えて、アイドルでは順位をつけられ、会社員では華やかOLを演じて。最終的に結婚できればいいと思っていたけれど、全部が叶わなかったことで、「無理をしないでもいられる、本当の自分になりなさい」と神様に言われたような気がしました。

 

みずから赤裸々に文章を綴ることに、最初は戸惑いもありました。でも、同じ悩みを抱える女性に少しでも元気になっていただけたら嬉しいという一心で、書かずにはいられなかったんです。

 

人から見たらキラキラ人生を歩んできたという方もいるかもしれないけど、そうではないということを、どん底を味わったから言えるようになりました。そのためにこれまでの困難がやってきたのかなと思っています。

 

2018年末に一気にSNSでバズったことで、急に人生が変わってしまったので、その頃は毎日不安で泣きながら母に電話していました。

 

心療内科のクリニックの先生にも、「これまで何もなくなってしまったと思っていたのに、急に使命が降ってきて足がすくんでいます」と話しました。でも先生は「もう人生、先に行って大丈夫です。恐れることありません」と言ってくださって。そこから前に進めました。